給水及び排水の管理6
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給水及び排水の管理⑥
給湯方式 < 直接加熱式 < 間接加熱式 < 中央式給湯の特徴 < 局所式給湯方式 < 給湯設備の検査 < 貯湯槽の保守管理 < 貯湯槽の電気防食 < 逃がし弁・自動空気抜き弁 < 給湯系統配管の維持管理 < 器具 < 水質管理結果に対する対策給湯・給湯方式
湯の性質
- 温度が高くなると密度が小さくなり、比体積は大きくなる。
- 水は大気圧(ゲージ圧力=0kPa)よりも低いと100℃以下で沸騰する。
- 開放水槽の上部に設置されたポンプの吸込み側の圧力は、大気圧よりも低くなっている。したがって、温度の高い湯をポンプでくみ上げようとする場合、その吸い上げることのできる高さは、温度が高いほど低くなり、60℃程度になると吸い上げることができなくなる。
- 水中における気体の溶解度は、水温の上昇により減少する。
- 水の体積弾性率は温度、および圧力によって多少異なるが、給水設備や給湯設備で扱う範囲では1.92~2.28GPaであり、ほとんど非圧縮性である。
- 配管中の湯に含まれている溶存空気を抜くためには、圧力の低いところに自動空気抜き弁を設置する必要がある。
備考:
体積弾性率とは、圧縮率の逆数をいう。圧縮率とは、系の体積がどの程度変化するかを表す状態量である。
ゲージ圧力は、大気圧を圧力0の基準として測った圧力。
絶対圧力は、完全な真空を圧力の基準として測った圧力。
上記湯の性質について簡単にまとめてみました。
給湯方式
給湯方式には中央式給湯方式と局所式給湯方式がある。
中央式給湯方式
機械室など一定の場所に加熱装置(ボイラ)を設け、貯湯槽を経て給湯管により各所へ湯を供給する方式。
直接加熱式と間接加熱式がある。おもにホテル、病院、大規模な多量の湯が必要な場所で採用されている。
直接加熱式
燃料や電気によって直接水を加熱する装置からの湯を使用する方式。
電気温水器、電気湯沸し器、真空式・無圧式温水発生器、貫流ボイラ―等
貫流ボイラ
- 小型の蒸気ボイラで水管群で構成され、耐圧性に優れ、缶水量も少なく取扱い資格は、貯槽式給湯ボイラに比べて大幅に緩和されている。
- 加熱用ヒ―タ―・温度調節装置・密閉式貯湯槽・減圧弁と逃し弁で構成される。
- 貯蔵部が大気に開放されていて、本体に給湯栓が取り付けられている。90℃以上の高温湯が得られ飲用として利用される。
間接加熱式
蒸気や高温の温水を熱源とし、加熱コイル等によって給湯用の水を加熱する方式。
加熱コイル付貯湯槽
- 貯湯槽に加熱用の熱交換器(加熱コイル)を組み込んだもので熱交換器に加熱用の蒸気や温水を通すことにより温水を作る。
一般的なホテルや病院ではこのタイプが多く多用されています。
第一種圧力容器に該当し年に1回の性能検査を受けなければならない。
- 蒸気や温水を一次側に通し、熱交換により二次側の水を加熱する装置である。
プレ―ト型、シェルチュ―ブ型がある。
- 熱交換により加熱された温水を貯湯槽に貯湯し、給湯する。負荷変動が大きい場合に採用される。
ボイラの種類
蒸気ボイラ
温水ボイラ
胴の内径と長さによる区分
日本ボイラ協会のホームページより転載
直接加熱式と間接加熱式の違いはしっかり覚えましょう。
中央式給湯の特徴
- 循環ポンプを設けることで末端の給水栓でもすぐに熱い湯を出すことが可能。
- 循環ポンプは、返湯管の途中に設ける。
- 循環ポンプの運転は、連続でなくサ―モスタットでコントロ―ルする。使用するポンプは背圧に耐えるものがよい。
- 給湯温度は60℃程度とする。55℃以下にしない。低いとレジオネラ属菌が繁殖するおそれがある。高すぎても 危険であり腐食が問題となる。
- 給湯管の管径はピ―ク時の湯の使用流量により決まる。
- 給湯横主管は湯の流れ方向に1/200~1/300程度の上がり勾配をつけ、最高部に自動空気抜き弁を設ける。
- 逃がし管は膨張した湯を逃がすために設ける。加熱装置から膨張水槽までの配管をいう。
- 逃がし弁(安全弁)はボイラら膨張水槽の圧力上昇したときに、あらかじめの設定圧力になると弁体が開く構造のもの。スプリングにより弁体を 弁座に押さえつけている。
局所式給湯方式
湯を使用する場所またはその近くに湯沸し器を置いて、個別に湯を出す方式。
給湯循環ポンプ
- 給水設備のポンプに準じる。
- ポンプメーカの取扱説明書に従って保守管理する。
- ポンプが複数設置されている場合は、各ポンプが均等に稼働するように交互運転を行う。
- 1年に1回作動確認を兼ねて分解・清掃を実施する。
給湯量(年平均1日当たり)
事務所 | 7~10L/(人・日) |
総合病院 | 100~200L(L・床) |
ホテル客室 | 150~250L/(人・日) |
集合住宅 | 150~300L/(L・戸) |
軽食店 | 20~30L/(m2) |
レストラン | 40~80L/(m2) |
大浴場洗い場 | 50L/人 |
給湯設備の検査
第一種圧力容器、小型ボイラ以外のボイラは
- 1ヵ月以内ごとに1回、定期自主検査を行う。
- 1年以内ごとに1回、労働基準監督署の性能検査を受ける。
- 1年以内ごとに1回、定期自主検査を行う。
上記検査は丸暗記すること。
定期自主検査は自ら行う検査のこと。
貯湯槽の保守管理
- 毎日、貯湯槽の外観検査を行い、漏れ、圧力計や温度計の異常、保温材の損傷、鉄骨製架台等鉄部の発錆状態、周囲の配管の状態等に異常がないか点検する。
- 開放式の貯湯槽が冷却塔の近くに設置されている場合は、レジオネラ属菌の侵入の危険性が高いので、清掃・点検・保守を入念に行う。
- 停滞水の防止には、給湯設備内の保有水量が給湯使用量に対して過大とならないように、貯湯槽等の運転台数をコントロ―ルし、使用しない貯湯槽の水は抜いておく。休止後 運転再開するときは、点検及び清掃を行い、設定温度に一定時間(およそ2時間)以上加熱してから使用する。
- 性能検査後マンホ―ルのふたを閉じるときは、パッキンを新しいものに交換する。
- 開放式の貯湯槽の場合、外部からの汚染の経路となりやすいマンホ―ルの気密性、オ―バ―フロ―管の防虫網の完全性等を点検・保守する。
貯湯槽の電気防食
- 配管に、配管の鋼よりも化学的に卑な金属(犠牲陽極という)を接触しておくと、鋼の代わりに腐食されて鋼は防食される。これを流電陽極式電気防食という。
- SUS444製の貯湯槽は電気防食を施してはならない。
- SUS444は、耐孔食性、耐隙間腐食性がSUS304製に比較して優れている。
電気防食の方法には流電陽極式電気防食と外部電源式電気防食とに分かれる。
流電陽極式電気防食とは
別称犠牲陽極方式とも呼ばれており、鉄よりも卑電位な金属(マグネシウム、亜鉛、アルミニウム)を接続することにより、形成される電池作用により管の電位を下げて防食するものである。
外部電源式電気防食とは不溶性電極(白金メッキを施したチタン線や炭素電極等)を陽極とし、外部電源(低圧直流電源)を用いて防食対象を保護する方法。
電極の取替が不要。(長寿命)であるが、電流密度の調整や定期的な保守が必要となる。
逃がし管・逃がし弁
逃がし管・逃し弁とは、加熱装置内部の圧力が異常上昇した際に圧力を外部に逃がすための安全装置をいう。
労働安全衛生法では、逃し管の代わりに膨張量を逃がす「逃し弁」を設けてもよいとされいる。
逃し弁はスプリングによって弁体を弁座に押さえつける構造となっている。
逃し弁は湯の膨張によりよって配管内に圧力が高くなり、設定圧力を超えると自動的に弁体を開いて膨張量を外部に排出し、圧力が所定の圧力以下に降下すると再び弁体を閉じる機構となっている。
- 加熱装置に逃し管を取付ける場合は、水を供給する補給水槽や高置水槽の水面よりも高く立ち上げ、途中に、弁を設けてはならない。
- 逃し弁は、1ヵ月に1回レバ―ハンドルを操作させて作動を確認する。
- 逃し弁には、加熱時に膨張した湯を逃がすための排水管を設ける必要がある。
膨張水槽
膨張水槽とは、給湯水の温度変化に伴う体積変化を調整するために設ける水槽をいう。
膨張水槽には、大気に開放された開放式膨張水槽と、密閉構造の密閉式膨張水槽がある。
密閉式膨張水槽は、密閉された水槽内の膜壁で隔てられた気体を圧縮して湯の膨張を吸収する構造となっている。
逃がし管・逃がし弁を設ける目的
湯は温度が上昇すると膨張します。これは物質の一般的な性質であり、水も同様です。
湯は膨張して体積が大きくなります。
貯湯槽などの加熱装置内では膨張して体積が大きくなると圧力も上昇します。
圧力を下げるために逃がし管・逃がし弁を設ける必要があります。
自動空気抜き弁
自動空気抜き弁は、黄銅またはステンレスの箱弁の中にフロート弁が入った構造で、配管中の温水に溶存している空気が分離して出ているフロートが上がり、弁が開いて空気が外部に抜けな構造のものである。
管内が負圧になった場合にフロートが下がって弁が開くタイプのものは、負圧になるところに設置すると、かえって空気を管内に吸引することになるので注意を要する。
- 水圧の低い位置の給湯栓からでる湯が、分離気体によって白濁するような場合には、自動空気抜き弁の空気排出口が詰まっていることが考えられる。
給湯系統配管の維持管理
- 各配管給湯水を均等に循環させるため、返湯管に設けられている弁により開度調整を行う。
- 各種弁などについては、1年に1回以上分解清掃を行う。
- シャワ―ヘッドや水栓のコマ部は、1年に2回以上定期に点検し、1年に1回以上は分解清掃を行う。
- 配管系統の末端や使用頻度の少ない給湯栓等、給湯温度が低い箇所を把握し、定期的(1日1回程度)に停滞水の放流を行い、温度測定を行う。
- 流量調整のためにバルブは仕切弁(ゲ―トバルブ)ではなく玉形弁(グロ―ブバルブ)を使用する。
- 腐食、水漏れ、逆流の可能性の有無や被覆状態の点検、弁の開度の調整を行う。
器具
器具のワッシャ―には合成ゴムを使用する。(天然ゴムは使用しない)。
↑
合成ゴムを使用は覚えましょう。
ちなみに天然ゴムを使用しない理由としては、器具のワッシャ―に使用される天然ゴムは、レジオネラ属菌に限らず 細菌の格好の栄養源となるので、合成ゴム(クロロプレン系等)を使用するとあります。
水質管理結果に対する対策
水質検査の結果、基準値を超える一般細菌が検出された場合、またはレジオネラ汚染が認められた場合には、可能な限りその原因を究明し、以下の対策を組合わせて改善する必要があります。
- 給湯水の循環状況について確認し、停滞水をなくす。
- 換水(強制ブロ―)する。
- 貯湯槽等を清掃する。
- 加熱処理(70℃で約20時間程度循環)やフラッシングを行う。
- 高濃度塩素により系内を一時的に消毒する。
- 貯湯温度を60℃、給湯温度を55℃以上に保持する。
- 細菌検査の回数を増やす。
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