建築物の環境衛生4
建築物衛生行政概論 建築物の環境衛生 空気環境の調整建築物の構造概論 給水及び排水の管理 清掃 ねずみ・昆虫等の防除
単位集 水質検査項目及び特定建築物の水質検査頻度 法令集 法改正 参考資料
建築物の環境衛生④
ホルムアルデヒド < 窒素酸化物 < 二酸化硫黄 < オゾン < アスベスト < 揮発性有機化合物(VOC) < 微生物 < アレルギ―
ホルムアルデヒド
- ホルムアルデヒドは、常温では可燃性の無色の気体である。水やアルコ―ル等に溶けやすい。
- 35~38%水溶液はホルマリンと呼ばれている。
- ホルムアルデヒドは還元性が強く、人間にとって毒性、刺激性が強い。発がん性が確認されている。
- 建材、洗剤、化粧品、消毒剤、防腐剤に利用されている。
- 燃焼排気ガス、たばこ煙中にも存在
- シックハウス症候群及び肺気腫の原因物質である。
- 建築基準法によって居室の種類によるホルムアルデヒド発散建築材料の面積制限と換気設備の設置が義務付けられている。
ホルムアルデヒドは新築の住宅や家具類の接着剤から発散します。
それにより、シックハウス症候群が多発しました。(1990年代)
新築、増築、大規模の修繕又は大規模の模様替えを完了し、その使用を開始した時点から直近の6月1日から9月30日までの間に1回実施することと定義されています。
上記ことがら丸暗記すること。
濃度の影響
濃度[ppm] | 影響 |
---|---|
0.01 | 結膜の刺激 |
0.03~0.05 | 中程度の眼の刺激 |
0.08 | WHOの基準値 |
0.16~0.45 | 眼・鼻・のどの灼熱感、角膜刺激症状 |
0.8 | 臭気を感じる |
1~3 | 眼・鼻・のどの刺激、不快感 |
5~10 | 眼・鼻・のどの強い刺激、軽い流涙 |
15~20 | 咳・深呼吸困難 |
50以上 | 深部気道障害、肺水腫 |
過去に出題された問題
- 水やアルコ―ルに溶けやすい。
- 常温では気体として存在する。
- 合成樹脂や接着剤の原料となる。
- 発がん性がある。
- 可燃性である。
- 尿素系やフェノ―ル系の合成樹脂の生成に用いられる。
- たばこ煙中に存在する。
- 暖房器具から発生する燃焼排気ガス中に存在する。
- 35~38%水溶液は、ホルマリンと呼ばれる。
- 洗剤や化粧品の原料として使われる。
- 肺気腫を起こす。
- 消毒剤や防腐剤として使用される。
窒素酸化物
窒素酸化物はNO、とNO2がある。
物質が高温で燃焼する際に、空気や物質中に含まれる窒素が空気中の酸素と反応して生成されるものが窒素酸化物であり、工場・事業場の燃焼施設やディーゼルエンジンが主な発生源である。
発生源から排出される際には大部分が一酸化窒素(NO)であり、排出後に空気中の酸素と結合して二酸化窒素(NO2となる。
従って一酸化窒素は直ぐ酸素と結合して二酸化窒素になるので大気汚染等で問題になるのは二酸化窒素の方です。
NO2の大気汚染にかかる環境規準は0.04~0.06ppm以下である。
窒素酸化物は刺激性が強く、非水溶性のため吸入すると肺の奥まで達する。
毒性が強く高濃度の場合は、目や鼻、のどを強く刺激する
窒素酸化物は独特の臭いがする。
一酸化窒素のヘモグロビン親和力は、一酸化炭素の1400倍ともいわれ、一酸化窒素ヘモグロビンを形成する。
二酸化硫黄
無色の気体。重油、軽油、石炭等で発生
硫黄を含む重油や軽油、石炭等が燃焼する際に、空気中の酸素と反応して生成される二酸化硫黄、三酸化硫黄等を総称して硫黄酸化物という。
硫黄酸化物の中で、健康影響上、最も問題となるのが二酸化硫黄である。 濃度の影響濃度[ppm] | 症状 |
---|---|
0.1~1 | 臭気を感じる。 |
2~3 | 特有の刺激臭(刺激臭となり不快臭を覚える。) |
5~10 | 粘膜刺激作用で咳、咽頭痛、喘息(鼻やのどに刺激があり咳がでる。) |
20 | 目への刺激症状(目に刺激を感じ、咳がひどくなる。) |
400~500 | 呼吸困難、死亡 |
大気汚染に係る環境基準は1時間値の1日平均が0.04ppm以下、1時間値が0.1ppm以下であること。
二酸化硫黄は吸着性が強いので、室内濃度は外気濃度の数分の1以下である。一般に、外気の方が濃度が高いが、室内で開放型の石油スト―ブ等を使用すると、 室内の方が濃度が高くなることがある。
オゾン
オゾンは光化学オキシダントの主成分であり、独特の刺激臭を持った青い気体で
水に溶けにくく肺の奥まで侵入する。
落雷や放電でもオゾンは発生するが、人間の環境に影響する大部分のオゾンは自動車やその他燃焼過程の排気ガス中に含まれている炭化水素と窒素酸化物の光化学
反応の結果として生成される。
室内のオゾン量に重要な影響を与えそうな発生源が、高電圧を利用したコピ―機、レ―ザ―プリンタ―、コロナ放電を伴う静電式空気清浄機である。
オゾンは酸化力の強い物質で、オゾン濃度が0.3~0.5ppm程度となると肺や気道粘膜に刺激し始める。
過去に出題された問題
- 特有の臭気がある。
- 水に溶けにくい。
- 室内では、高電圧を利用している機器から発生する。
- 吸入すると肺の奥まで達する。
- レ―ザプリンタから発生する。
- 光化学オキシダントとして、大気の汚染に係る環境基準が定められている。
- 自然界では、落雷の際の放電で発生する。
- 紫外線の光化学反応で生成される。
アスベスト
アスベストは、自然界に存在する水和化したケイ酸塩鉱物の総称である。
発がん性があり、かつては使われていたが、現在は製造が禁止されている。
アスベストの繊維は極めて細く、飛散すると呼吸器系に入り、肺線維症、悪性中皮膚の原因となる。肺癌を起こす恐れがある。
クリソタイル、アモサイト、クロシドライト等の種類がある。
揮発性有機化合物(VOC)
揮発する有機化合物の総称。種類が極めて多い。
種類 |
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ベンゼン、パラジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエチレン、エチルベンゼン 酢酸エチル、アセドアルデヒド、フタル酸ジブジル、スチレン、ジエチルアミンなど |
沸点 | 名称 | 略称 |
---|---|---|
0℃以下から50~100℃ | 高揮性有機化合物 | VVOC |
50~100℃から240~260℃ | 揮性有機化合物 | VOC |
240~260℃から400℃ | 準揮性有機化合物 | SVOC |
380℃以上 | 粒子状有機化合物 | POM |
汚染物質の例
汚染物質 | 主な発生源 | 人体への影響 |
---|---|---|
ホルムアルデヒド | 建材材料(接着剤、内装材) | 目、鼻、喉の刺激 |
硫黄酸化物 | 排ガス、燃焼器具、石油スト―ブ | 喘息、粘膜刺激 |
窒素酸化物 | 排ガス、燃焼器具、ディ―ゼルエンジン | 気管支炎、呼吸器障害 |
アスベスト | 断熱材 | 肺がん、肺気腫、中皮腫 |
ラドン | 土壌 | 肺がん |
VOC | 洗浄剤や溶剤 | シックビル症候群 |
一酸化炭素 | 燃焼器具(不完全燃焼) | 一酸化炭素中毒 |
オゾン | コピ―機 | 気道粘膜刺激 |
たばこ煙 | 喫煙 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) |
ハウスダスト | 粉じん、ダニ | 喘息、アレルギ―疾患 |
微生物(細菌、カビ類) | 超音波加湿器 | 過敏性肺炎 |
パラジクロロベンゼン | 防虫剤,トイレの消臭ブロック | 目眩、頭痛、肝臓障害を起こす |
微生物
微生物とは目で見ることのできない生物のことを言います。
主な微生物に細菌と真菌があります。
真菌はエアロゾルや結露に伴って人体に侵入しアレルギ―の原因となることがある。
室内の管理が不十分であると、超音波式加湿器やル―ムク―ラ等は感染性の微生物を増殖した後、エアロゾルとして発生させる恐れがある。
従って、空気調和機内は、微生物の増殖にとって好環境である。
一般に、室内の微生物濃度は屋外の濃度と無関係である。
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これ重要です。
事務所建築物の室内では、浮遊真菌濃度より浮遊細菌濃度の方が高い。
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これも、覚えましょう。
真菌より細菌が高い。高いのは細菌ですよ
アレルギ―
近年、アレルギ―性鼻炎、花粉症、アトピ―皮膚炎、気管支喘息をはじめとするアレルギ―疾患が増加しており、国民の3割程度が何らかのアレルギ―疾患に罹患しているといわれている。
- アレルギ―とは、特定の抗原(体内に侵入した異物)=アレルゲンによって、その抗原に特異的に結合(攻撃)する抗体(免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質)やリンパ球が体内に生じる。 これを抗原抗体反応、あるいは免疫反応という。そのうち、人に有害な免疫反応をアレルギ―と呼んでいる。
アレルゲン
真菌(カビ)、花粉、ペットの毛、ゴキブリの虫体などほとんどの有機粉じんはアレルゲンとなるが、最も多いのはヒョウヒダニ等の屋内塵性のダニ由来の粉じんである。アレルゲンとなる真菌類としては、カンジダ、アルテルナリア、グラドスポリウム、アスベルギルス、ペニシリウムなどがある。
アレルゲンとはアレルギ―疾患を持っている人の抗体と特異的に反応する抗原のこと。
アレルゲン対策アレルゲン対策としては、室内の温湿度を適正にして、ダニ、真菌の増殖を防ぐ。
ダニの増殖を促すカ―ペット等を必要以上に使用しない。清掃の励行等の建築物の維持管理における配慮が必要である。
空気中に浮遊しているアレルゲンの主要なものはダニアレルゲンである。
気管支喘息の原因となるアレルゲンは主にヒョウヒダニである。
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これ重要です。
ダニは高温多湿になる夏に多いので、アレルゲン量はダニの死骸や糞等が蓄積された秋に最大になる。
(重要)ダニは梅雨の時期が一番活動が活発になります。 秋にダニによるアレルギ―が増える理由は、6月~7月にかけて増えたダニが、 9月に気温・湿度が下がることで大量に死ぬことにより、その死骸が増えるのが原因と言われて います。 ダニ・カビ・ペット・花粉アレルギ―は粒子物質としてみた場合、その大部分は数μmの大きさで、エアフィルタによる除去が有効であると考えられている。過敏性肺炎
有機粉じんの吸入により、肺の間質(肺胞、気管支、毛細血管を取り囲んでつなぐ組織)に病変がおきる間質性疾患である。
家庭やオフィスで加湿器や空気調和設備に増殖した好熱性放線菌や、真菌その他の粒子が抗原となるので、換気装置性肺炎ともよばれる。急性と慢性がある。
特に夏に増殖する。高温高湿で日当たりが悪く、換気状態の悪い家屋で増殖する真菌(トリコスポロン)によって発症するものは夏型過敏性肺炎と呼ばれる。
発生時の対策と予防上最も重要なことは、環境からの抗原の除去であり、そのために貯水槽やフィルタの清掃や消毒を頻回に行い、空気調和設備や加湿器が微生物で汚染されるのを防止する。
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