令和5年度空気環境の調整「過去問題解説2」
問題51
流体力学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 連続の式(質量保存の法則)は、ダクト内の流体の温度、断面積、流速の積が一定となることを意味する。
- 無秩序な乱れによる流体塊の混合を伴う流れを乱流という。
- ベルヌーイの定理は、流れの力学的エネルギーの保存の仮定から導かれる。
- レイノルズ数が小さい流れでは、粘性が強い流れとなる。
- ダクトの形状変化に伴う圧力損失は、形状抵抗係数と風速の2乗に比例する。
答え【1】
連続の式(質量保存の法則)は、ダクト中の流体の密度、断面積、流速の積が一定となること。連続の式
下の図は断面積の異なるダクトを考えてみます。
この場合、流体の密度が一定なら以下の関係が成り立ちます。
S1 x V1 x p = S2 x V2 x p = S3 x V3 x p
p:流体の密度上記の式のことを連続の式といいます。 つまり通過する密度が一定なら断面積が小さいと流体の流速は速くなり、断面積が大きいと流体の流速は遅くなります。
ベルヌ―イの定理
ひとつながりの管の中を流れる流体を考えたとき、管の太さに関係なく流体の全圧は一定になります。これが『ベルヌ―イの定理』です。流体の持っている力は一定で、動圧が増えれば静圧が減り、静圧が増えれば動圧が減るというイメ―ジです。
流れの運動エネルギ―の保存を仮定すると、次のようなベルヌ―イの定理を表す式が得られる。
この式の各項の単位はPaであり、第一項を動圧、第二項を静圧、第三項を位置圧と呼び、摩擦のない理想気体の流れでは、その合計値は一定となる。
気体では位置圧は無視してよいほど小さい。
従って、
問題52
下の図のように、風上側と風下側にそれぞれ一つの開口部を有する建築物における外部の自然風のみによる自然換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 外部の自然風の風速が2倍になると、換気量は2倍になる。
- 換気量は、開口部の①と②の風圧係数の差の平方根に比例する。
- 開口部①と②の両方の開口面積を2倍にすると、換気量は4倍になる。
- 風下側に位置する開口部②の風圧係数は、一般的に負の値となる。
- 各開口の流量係数は、開口部の形状に関係する。
答え【3】
外部風による換気量を求める式は以下になります。これから、風力による換気量は、風速、開口面積に比例し、風圧係数の差の平方根に比例します。
従って
(3)は
開口部①と②の両方の開口面積を2倍にすると、換気量は2倍になる。
- 平成27年問題52
問題53
室内気流に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 混合換気(混合方式の換気)は、室温よりやや低温の空調空気を床面付近に低速で供給し、天井面付近で排気する換気方式である。
- コールドドラフトは、冷たい壁付近などでの自然対流による下降流れが原因で生じることがある。
- 壁面上部からの水平吹出しの空気調和方式では、暖房時に居住域に停滞域が生じて上下温度差が大きくなりやすい。
- 天井中央付近から下向き吹出しの空気調和方式では、冷房時に冷気が床面付近に拡散し、室上部に停滞域が生じやすい。
- ドラフトとは不快な局部気流のことであり、風速、気流変動の大きさ、空気温度の影響を受ける。
答え【1】
(1)の説明は置換換気です。混合方式は、室内に供給する清浄空気と室内空気を十分に混合・希釈する方式である。
問題54
通風を行う開口部の通過風量に関する次の式のア~ウに入る用語の組合せとして、正しいものはどれか。
建物の窓などの開口部で通風が行われる場合、通風風量Qは下記のような式に表すことができる。
- (ア)相当開口面積―――(イ)空気の密度―――(ウ)開口部前後の圧力差
- (ア)開口部前後の圧力差―――(イ)相当開口面積―――(ウ)空気の密度
- (ア)相当開口面積―――(イ)開口部前後の圧力差―――(ウ)空気の密度
- (ア)開口部前後の圧力差―――(イ)空気の密度―――(ウ)相当開口面積
- (ア)空気の密度―――(イ)相当開口面積―――(ウ)開口部前後の圧力差
答え【1】
建物の窓などの開口部で通風が行われる場合、通過風量Qは、開口部面積に比例し、圧力差の平方根に比例する。
従って式は以下になります。
なお、単位は、相当開口面積がm2、開口部前後の圧力差がPaで、空気の密度は1.2[kg/m3]である。
問題55
喫煙室において、1時間当たり15本のたばこが喫煙されているとき、喫煙室内の一酸化炭素濃度を建築物環境衛生管理基準値の6ppm以下に維持するために最低限必要な換気量として、最も近いものは次のうちどれか。
ただし、室内は定常状態・完全混合(瞬時一様拡散)とし、外気一酸化炭素濃度は0ppm、たばこ1本当たりの一酸化炭素発生量は0.0004m3/hとする。
- 40m3/h
- 66m3/h
- 600m3/h
- 1,000m3/h
- 4,000m3/h
答え【4】
汚染物質のための必要換気量Qは以下の式で求めることができます。