令和5年度建築物の環境衛生「過去問題解説1」
問題21
環境基準と閾値に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 環境基準には、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準と生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準である。
- 閾値とは最小の刺激量として定義され、医学的な有害性の判断の根拠となる量である。
- 環境基準については、常に適切な科学的判断を加えられ、必要な改定がなされなければならない。
- 閾値の概念を示すHatchの図において、縦軸は化学的因子の量である。
- 環境基準は、動物実験や疫学調査等から得られる有害濃度を基礎とし、安全度を考慮して決定されている。
答え【4】
閾値の概念を示すHatchの図において、縦軸は医学的症状、横軸は化学的因子の量である。閾値とは最小の刺激量として定義され、医学的な有害性の判断の根拠となる量、言い換えれば基準値と考えられるものである。閾値の概念を示す図としてHatchの図と 呼ばれるものがある。
因みに以下の図がHatchの図ですが基本的にこの図は覚える必要はありません。
この問題は消去法で解いていくと後の選択枠は正しいので(4)が誤りかなぐらいでいいと思います。
問題22
環境衛生に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 許容濃度は一般環境の基準として用いてはならない。
- (公社)日本産業衛生学会は、労働者の有害物質による健康障害を予防するために許容濃度を公表している。
- 許容濃度以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪い影響を見られないと判断される。
- 有害物の曝露量と集団の反応率との関係を、量一影響関係という。
- 学校における環境衛生の基準は、学校保健安全法で定められている。
答え【4】
有害物の曝露量と集団の反応率との関係を、量―反応関係という。量―影響関係とは、有害物質の負荷量と個体レベルにおける影響の関係をいう。
問題23
人体の臓器系とその障害・疾病との組合せとして、最も不適当なものはどれか。
- 造血器系―――再生不良性貧血
- 消化器系―――肝硬変
- 呼吸器系―――肺気腫
- 神経系――――甲状腺機能低下症
- 循環器系―――動脈硬化症
答え【4】
甲状腺機能低下症は、内分泌系の疾病です。主な組合せは以下になります。
臓器名 | 主な機能 | 主な構成器官 | 疾患 |
---|---|---|---|
循環器系 | 酸素と栄養の供給 | 心臓、動脈 静脈、リンパ管 | 心筋梗塞 |
呼吸器系 | 酸素の摂取と 二酸化炭素の排出 | 気道、肺 | 肺気腫、肺炎、気管支炎 |
消化器系 | 栄養と水の摂取、再合成と排泄 | 食道。肝臓、胃 十二指腸、肛門 小腸、大腸等 | 肝炎、腸炎 胃炎、胃潰瘍 |
腎臓、泌尿器系 | 血液中の老廃物の排泄 | 腎臓、尿管 膀胱、尿道 | 腎不全 |
感覚器系 | 外部刺激の神経系への伝達 感覚器系は神経系と密接な関係を持っている。 | 聴覚器、視覚器 味覚器、嗅覚 | 左記器官の疾患 |
筋骨格系 | 身体の構成と運動 | 骨、筋肉 | 骨折 |
生殖器系 | 子孫形成と種の保存 | 生殖器 | 生殖器疾患 |
皮膚系 | 発汗 | 外皮 | 皮膚疾患 |
神経系 | 刺激の中枢への伝達、 中枢からの命令の伝達 | 脳、知覚神経 運動神経、自律神経 | パ―キンソン病 脳出血、脳梗塞 |
造血器系 | 赤血球、白血球、血小板の生成 | 骨髄、脾臓 | 血友病、白血病 |
内分泌系 | 成長、代謝等の活性のコントロ―ル | 視床下部、下垂体 副腎、甲状腺、性腺 | 甲状腺疾患 |
問題24
体温の調節における熱産生と熱放射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 基礎代謝とは、睡眠時のエネルギー代謝のことをいう。
- 高温環境では発汗や血流量が増加し、代謝量は上昇する。
- 熱産生量は人体の活動状況によって異なり、作業量が増せば増加する。
- 日本人の基礎代謝は夏の方が冬よりも低い。
- 低温の環境では震えによって熱産生量が増加する。
答え【1】
基礎代謝は早朝覚醒後の空腹時で仰臥位(あおむけの姿勢)におけるエネルギ―代謝量に等しい。基礎代謝量
- 基礎代謝量とは、目覚めている状態で生命を維持するための必要な最小限のエネルギ―消費量のこと。
- 基礎代謝は早朝覚醒後の空腹時で仰臥位(あおむけの姿勢)におけるエネルギ―代謝量に等しい
- 体表面積当たりの基礎代謝量は幼少期で最大となり、成人の約1.6倍、以降20歳代までに急速に低下し、その後は大きく変化はない。
- 季節の影響では基礎代謝量は夏低く冬高い。
- 安静座位時の代謝量は基礎代謝量の約20%増しであり、睡眠時の代謝は基礎代謝量の95%程度である。
- 日本人の30歳代の平均的基礎代謝量は、男子は約1,452kcal/日、女子は約1,167kcal/日である。
単位時間単位体表面積当たりでは、男子は約35.3kcal/m2/時、女子は約32.1kcal/m2/時となる。
問題25
高齢者における温度環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 一般に若年者に比べて暖かい温度を好むとされている。
- 寒さに対する感受性は若年者に比べて高い傾向にある。
- 冬季における深部体温は、若年者に比べて低い傾向にある。
- 放射熱がない場合、高齢者の8割を満足させる気温の範囲は青年に比べて狭い範囲となる。
- 寒冷環境に曝露された際の血圧の変動が、若年者に比べて顕著である。
答え【2】
高齢者に対する温度環境の問題も出題されますがパターン化されているのでそれほど難しくはないと思います。高齢者の寒さに対する感受性は、若年者に比べて低い傾向にあります。
高齢者は身体活動量が少なく、また代謝量も少ないため、一般に若年者より暖かい室温を好むとされている。一方、冬期の住宅内の温度測定してみると、
高齢者の室温は若年者と比較して低い場合が多い。
この原因として、高齢者の寒さに対する感受性の低下が考えられ、そして感受性の低下の原因としては、皮膚からの温度情報の減少が一因であると考えられている。
同時に測定した深部体温は、高齢者の方が低くなっている。特に、深部体温が35℃未満を低体温症と呼ぶが、高齢者はこの低体温症に陥りやすい。