令和4年度建築物の環境衛生「過去問題解説5」
問題41
自然界に排出されると、生物濃縮によりヒトの健康に影響を及ぼす物質は次のうちどれか。
- 四塩化炭素
- シアン化合物
- 鉛
- 有機水銀
- 六価クロム
答え【4】
生物濃縮とは、特定の物質が生物の体内に高濃度で蓄積される現象や、その過程のことです。生物濃縮が引き起こした病気として有なものに水俣病(みなまたびょう)が挙げられます。
1956年に熊本県水俣湾周辺で発生した「水俣病(みなまたびょう)」は、生物濃縮が引き起こした病気として有名です。工場が水銀を含む廃水を海に流したために、周辺の魚介類の間で生物濃縮が起こり、その魚介類を食べた人に中毒症状が表れました。
問題42
喉の渇きが生じた場合の体内における水分欠乏率として、最も適当なものはどれか。
- 1%程度
- 4%程度
- 6%程度
- 8%程度
- 10%程度
答え【1】
喉の渇きが生じた場合の体内における水分欠乏率は約1%程度です。
水分の欠乏率と脱水症状
水分欠乏率「%」 | 脱水症状 |
---|---|
1 | のどの渇き |
2 | 強い渇き、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮 |
4 | 動きのにぶり、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労及び嗜眠、感情鈍麻、吐気、感情の不安定 |
6 | 手、足の震え、熱性抑うつ症昏迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍、呼吸数の増加 |
8 | 呼吸困難、めまい、チアノ―ゼ、言語不明瞭、疲労増加、精神錯乱 |
10~12 | 筋けいれん、平衡機能失調、失神、舌の腫張、講妄および興奮状態、循環不全、血液濃縮及び血液の減少、腎機能不全 |
15~17 | 皮膚がしなびれてくる。飲込み困難、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化舌がしびれる、 |
18 | 皮膚のひび割れ、尿生成停止 |
20%以上 | 死亡 |
問題43
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく感染症の類型のうち、一類、二類、三類全てに実施される措置として、最も不適当なものはどれか。
- 積極的疫学調査
- 死体の移動制限
- 無症状病原体保有者への入院勧告
- 汚染された場所の消毒
- 就業制限
答え【3】
(3)の無症状病原体保有者への入院勧告は一類感染症のみに適用されます。
一類感染症 | 二類感染症 | 三類感染症 | 四類感染症 | 五類感染症 | |
---|---|---|---|---|---|
疾病名の規定方法 | 法律 | 法律 | 法律 | 政令 | 省令 |
擬似症患者への適用 | 〇 | 〇 | X | X | X |
無症状病原体保有者への適用 | 〇 | X | X | X | X |
積極的疫学調査の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
医師の届出 | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(一部を除き7日以内)) |
獣医師の届出 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
健康診断の 受診の勧告・実施 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
就業制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
入院の勧告・措置・移送 | 〇 | 〇 | X | X | X |
汚染された場所の消毒 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
ねずみ・昆虫等の駆除 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
汚染された物件の排気等 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
死体の移動制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
生活用水の使用制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
建築物の立入制限・封鎖 | 〇 | X | X | X | X |
交通の制限 | 〇 | X | X | X | X |
動物の輸入禁止・輸入検疫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
問題44
主にヒト―ヒト感染によって感染が拡大する感染症は次のうちどれか。
- マイコプラズマ肺炎
- テング熱
- 発疹チフス
- レプトスピラ症
- ジカウイルス感染症
答え【1】
マイコプラズマ肺炎が正しい。
マイコプラズマという細菌によって起こる肺炎です。若い人に起こることが多く、咳などによって周囲に感染をうつします。- デングウイルスを持っている蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)に刺されることで感染します。人から人へ感染することはありません。
- 発疹チフスとは、発疹チフスリッチケアと呼ばれる細菌による感染症のことです。発疹チフスリッチケアに感染したコロモジラミに吸血され感染が成立すると発症します。人から人へ感染することはありません。
- レプトスピラ症とは、レプトスピラ菌によって引き起こされる感染症です。レプトスピラ菌はネズミやイヌなどの哺乳類に感染し、動物の尿中に排泄されることから、土壌や水が汚染されます。人は、汚染された水などの環境に接触することにより感染します。人から人へ感染することはありません。
- ジカウイルス感染症とはヤブカ(Aedes)属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症である。ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属し、症状はデング熱に類似するが、それより軽い。人から人へ感染することはありません。
問題45
次亜塩素酸ナトリウム消毒に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 一般に手指消毒で最も用いられる。
- 通常5%の濃度で使用する。
- 芽胞には効果がない。
- 室内では噴霧により使用する。
- 有機物が多くても効力は減退しない。
答え【3】
正しいのは(3)です。
各消毒剤の特徴はしっかり覚えましょう。
消毒剤
薬品名 | 用途 | 効果 | 備考 |
---|---|---|---|
クレゾ―ル「3%」 | ほとんどの物件(飲食物、食器には不適) | 芽胞、ウイルスには無効 | 手の消毒には1~2%消毒液 |
次亜塩素酸ナトリウム | 井戸、水槽、汚水、し尿、その他廃棄物 | 細菌、ウイルスに有効、芽胞には効果が得られにくい | 有機物が多いと効力は減退 |
ホルマリン | 衣服、寝具、ガラス器 | すべての微生物に有効 | 皮膚、粘膜を強く刺激するので手指の消毒に不適 |
逆性石鹸 | 手指、ガラス器、金属器具 | 結核菌、ウイルスには無効 | 有機物が多い場合は不適 |
消毒用エタノ―ル | 手指、皮膚、医療器具 | 芽胞、一部のウイルスには無効 | ホルマリンの存在は殺菌力を減少させる。 70%が至適濃度 |
酸化エチレン (エチレンオキサイド) | ガス減菌 |