令和2年度建築物の環境衛生「過去問題解説5」
問題41
飲用水汚染事故の発生原因として、最も不適当なものは次のうちどれか。
- ノロウイルス
- アニサキス
- カンピロバクタ―・ジェジュニ
- 病原性大腸菌
- 赤痢アメ―バ
答え【2】
この問題ですが、実際厚生労働省より水質汚染事故等の発生状況が報告されています。この中でアニサキスは含まれていません。
そもそもアニサキスは魚介類に寄生する寄生虫です。 参考サイトでご確認してください。
つい最近の主な発生状況
発生場所 | 原因飲料水 | 原因物質 |
---|---|---|
長野県 | 飲料水供給施設(湧水) | カンピロバクタ―・ジェジュニ |
兵庫県 | 簡易専用水道 | ノロウイルス |
神奈川県 | 簡易専用水道 | 一般細菌、大腸菌 |
富山県 | 簡易水道(地下水) | エルシニア・エンテロコリチカ |
山形県 | 湧水 | 病原大腸菌(O157) |
長野県 | 専用水道(沢水) | 病原大腸菌(O121) |
宮城県 | 井戸水 | A型ボツリヌス菌(芽胞菌) |
千葉県 | 冷水器(簡易専用水道) | A群ロタウイルス |
新潟県 | 井戸水 | ノロウイルス、ウェルシュ、黄色ブドウ球菌、カンピロバクタ―、大腸菌 |
問題42
水道法の水質基準に規定される物質とその疾病との組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。
- ヒ素―――――――――ボ―エン病
- 亜硝酸態窒素―――――メトヘモグロビン血症
- 四塩化炭素――――――肝がん
- ベンゼン―――――――再生不良性貧血
- フッ素――――――――舌がん
答え【5】
この問題は今回初めての出題です。(5)のフッ素は斑状歯等の疾病があります。
斑状歯は、「歯の発生期に過剰のフッ素を摂取すること」により起こります。
(1)のボ―エン病とは皮膚科領域の悪性腫瘍で井戸水や農薬などに含まれたヒ素の摂取が原因として考えられます。
(2)体内に、亜硝酸性窒素を含んだ飲料水が入ると、 体内でメトヘモグロビン血症という、死にもつながる酸素欠乏状態を引き起こします。
(3)の四塩化炭素は、長期に曝露するなどした場合は昏睡、そして死亡する可能性がある。また慢性的な暴露により肝臓や腎臓に悪影響を与える。
(4)ベンゼンは中枢神経系を激しく損傷し、骨髄に慢性的な損傷を引き起こし、発がん性物質でもある。長期間ベンゼンを吸っていると、白血病や再生不良性貧血などの血液の病気になると考えられています。
問題43
感染症法に基づく感染症の類型のうち、1類、2類、3類全て実施される措置として、最も不適当なものはどれか。
- 健康診断受診の勧告
- 就業制限
- 死体の移動制限
- 入院勧告
- 積極的疫学調査
答え【4】
入院勧告は一類感染症と二類感染症(及び新型インフルエンザ等感染症)です。
一類感染症 | 二類感染症 | 三類感染症 | 四類感染症 | 五類感染症 | |
---|---|---|---|---|---|
疾病名の規定方法 | 法律 | 法律 | 法律 | 政令 | 省令 |
擬似症患者への適用 | 〇 | 〇 | X | X | X |
無症状病原体保有者への適用 | 〇 | X | X | X | X |
積極的疫学調査の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
医師の届出 | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(一部を除き7日以内)) |
獣医師の届出 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
健康診断の 受診の勧告・実施 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
就業制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
入院の勧告・措置・移送 | 〇 | 〇 | X | X | X |
汚染された場所の消毒 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
ねずみ・昆虫等の駆除 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
汚染された物件の排気等 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
死体の移動制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
生活用水の使用制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
建築物の立入制限・封鎖 | 〇 | X | X | X | X |
交通の制限 | 〇 | X | X | X | X |
動物の輸入禁止・輸入検疫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
- 令和元年問題43
- 平成30年問題42
問題44
クリプトポリジウム症とその病原体に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 感染した哺乳類の糞便が感染源である。
- 大きさ4~6μmの原虫である。
- 感染すると、2~5日後に下痢や腹痛等の症状が表れる。
- 特定の環境下では、2~6ヵ月間感染力を維持する。
- 対策として、給水栓末端における遊離残留塩素濃度を、0.2mg/L以上に保つことが重要である。
答え【5】
(5)は、芽胞と呼ばれる殻により、塩素に抵抗を示し、水の塩素消毒は病原体に対して有効ではない。つまり、塩素消毒(給水栓における水の遊離残留塩素 0.1mg/l 以上)では死滅しません
- 病原体は原虫である。
- 病原体を含む水を経口摂取して発症する。
- 潜伏期間は1週間である。
- 芽胞と呼ばれる殻により、塩素に抵抗を示し、水の塩素消毒は病原体に対して有効ではない。
- 病原体による水の汚染を判断上で、大腸菌などの指標菌の検査は有用である。
- 水道を介して発生する消化器感染症である。
- 症状は一般的に1~2週間続きその後軽減する。
- 平成27年問題43
問題45
消毒薬に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- クレゾ―ルは、食器の消毒には不適である。
- 逆性石けんは、緑膿菌や結核菌に対する殺菌力は弱い。
- ホルマリンは、全ての微生物に有効である。
- 消毒用エタノ―ルは、一部のウイルスには無効である。
- 次亜塩素酸ナトリウムは、芽胞にも有効である。
答え【5】
(5)の次亜塩素酸ナトリウムは、細菌、ウイルスに有効、芽胞には効果が得られにくい。(無効です。)薬品名 | 用途 | 効果 | 備考 |
---|---|---|---|
クレゾ―ル「3%」 | ほとんどの物件(飲食物、食器には不適) | 芽胞、ウイルスには無効 | 手の消毒には1~2%消毒液 |
次亜塩素酸ナトリウム | 井戸、水槽、汚水、し尿、その他廃棄物 | 細菌、ウイルスに有効、芽胞には効果が得られにくい | 有機物が多いと効力は減退 |
ホルマリン | 衣服、寝具、ガラス器 | すべての微生物に有効 | 皮膚、粘膜を強く刺激するので手指の消毒に不適 |
逆性石鹸 | 手指、ガラス器、金属器具 | 結核菌、ウイルスには無効 | 有機物が多い場合は不適 |
消毒用エタノ―ル | 手指、皮膚、医療器具 | 芽胞、一部のウイルスには無効 | ホルマリンの存在は殺菌力を減少させる。 70%が至適濃度 |
酸化エチレン (エチレンオキサイド) | ガス減菌 |
- 令和元年問題44
- 平成30年問題44
- 平成28年問題44
- 平成27年問題44
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