令和1年度給水及び排水の管理「過去問題解説4」
問題121
給湯設備に使用される材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- ステンレス鋼管の線膨張係数は、架橋ポリエチレン管の線膨張係数より小さい。
- 金属材料の曲げ加工を行った場合には、応力腐食の原因になる。
- 樹脂管を温度の高い湯に使用すると、塩素による劣化が生じやすい。
- 返湯管に銅管を用いた場合は、他の配管材料を用いた場合と比較して、流速を速く設定できる。
- ステンレス鋼管は、隙間腐食、もらい錆等による腐食が生じる可能性がある。
答え【4】
銅管は、表面に酸化被膜が形成され、母材が不動態化することによって耐食性を維持するが、管内の水の流速が速いと酸化被膜が形成されず、その部分と周囲のの電位差 も影響して、流れ方向にえぐられたような潰食といわれる腐食が生じる。したがって、潰食の発生を防止するためには、管内の流速を速くしないことが大切である。給湯管の流速は、一般的に1.5m/s以下とされるが、柔らかい銅管では1.2m/s以下とされている。
不動態化とは、電極電位列で卑な金属の表面に酸化被膜が生じて、活性を失って貴な金属の状態になることをいう。
ステンレス鋼管も銅管同様に、酸化被膜による母材の不動態化によって耐食性を維持する。酸化被膜の破壊による腐食、隙間腐食、残留応力腐食、もらいさびによる腐食等が生じる可能性がある。
- 隙間腐食とは
- 金属同士の隙間、金属と他の物質との隙間に、電解質溶液(塩素が溶けている水等)の濃度差や溶存酸素量の差等によって、局部的に発生する腐食をいう。
- 残留応力腐食とは
- 金属に過大な荷重をかけたり、曲げ加工をしたりすると、金属内に残留応力が生じ、その部分の酸化被膜の局部的に破壊されていると、化学作用と応力との共同作用によって生じる腐食をいう。
問題122
給湯設備の保守管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 器具のワッシャ―には、細菌の繁殖を防止するために合成ゴムを使用する。
- 中央式給湯方式においては、加熱により残留塩素が消滅する場合があるので、その水質には留意する。
- 貯湯槽が複数ある場合は、停滞水の防止のため、使用しない貯湯槽の水は抜いておく。
- 貯湯槽に流電陽極式電気防食を施す場合は、外部電源が必要である。
- 給湯設備に防錆剤を使用する場合は、飲料水と同じ管理方法による。
答え【4】
流電陽極式電気防食を施す場合は、外部電源は必要ありません。まず電気防食の原理として
水中または土中における金属の腐食は局部電池の形成による電気化学的機構において起こるものであるから、その腐食電流を打ち消すだけの直流電流を人為的に流入させると腐食が抑制される。
電気防食の方法には流電陽極式電気防食と外部電源式電気防食とに分かれる。
流電陽極式電気防食とは
別称犠牲陽極方式とも呼ばれており、鉄よりも卑電位な金属(マグネシウム、亜鉛、アルミニウム)を接続することにより、形成される電池作用により管の電位を下げて防食するものである。
外部電源式電気防食とは不溶性電極(白金メッキを施したチタン線や炭素電極等)を陽極とし、外部電源(低圧直流電源)を用いて防食対象を保護する方法。
電極の取替が不要。(長寿命)であるが、電流密度の調整や定期的な保守が必要となる。
(1)の器具のワッシャ―に天然ゴムはレジオネラ属菌に限らず細菌の格好の栄養源となるので、使用しない。
問題123
給湯設備の保守管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 給湯循環ポンプは、作動確認を兼ねて分解・清掃を実施する。
- 自動空気抜き弁は、弁からの水漏れがある場合には分解・清掃を実施する。
- 真空式温水発生機の定期検査は、労働安全衛生法の規定に基づいて行う。
- 逃し弁は、レバ―ハンドルを操作して作動を確認する。
- 配管系統の末端において、定期的に停滞水の排出を行い、温度測定を実施する。
答え【3】
真空式温水発生機はボイラに該当しないため労働安全衛生法の規定による定期検査を行う必要はない。しかし、毎日外観点検等は行うことが望ましい。
画像提供:一般社団法人 日本ボイラ協会
問題124
雑用水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 広域循環方式は、複数の建築物間で排水再利用設備を共同利用し、処理水を各建築物に送水して利用するものである。
- 雑用水は、災害時における非常用水の原水として利用することができる。
- 雨水利用設備における上水代替率とは、使用水量に対する雨水利用量の割合である。
- 散水、修景、清掃用水として利用する場合、雑用水受水槽は、6面点検ができるように、設置することが望ましい。
- 上水管、雑用水管、給湯管等が並行して配管される場合、配管の配列を変えてはならない。
答え【1】
雑用水を利用する方式は、再利用水の循環方式から「個別循環」「地区循環」「広域循環」の3つに分類される他、雨水を貯留して利用する「雨水利用方式」があります。 (1)の説明は地区循環方式の説明です。広域循環方式とはより広い地域を対象に、下水処理場等で処理された水を雑用水としてその地域内の事業所や住宅などに供給するものです。
個別循環方式とは事務所ビルなどで発生する排水や雨水を同一ビル内で処理し、雑用水用として循環利用する方式です。
個別循環方式 | 個別の建物ごとに排水を処理。各建物内で処理水を雑用水として便所洗浄水等に循環利用する。 |
地区循環方式 | 地区内の複数の建物に排水再利用設備を共同利用し、処理した水を各建物の送水して便所洗浄水として利用する。 |
広域循環方式 | 公共下水処理場の処理水を排水再利用設備で処理して、比較的広域で大規模な地区に送水して、雑用水として利用する。 |
問題125
雑用水として使用する場合の標準的な雨水処理施設における次のフロ―シ―トの[ ]内に入る単位装置の組合せとして、最も適当なものはどれか。
- (ア)沈砂槽―――――――(イ)沈殿槽
- (ア)流量調整槽―――――(イ)活性炭吸着装置
- (ア)活性炭吸着装置―――(イ)沈殿槽
- (ア)流量調整槽―――――(イ)生物処理槽
- (ア)沈砂槽―――――――(イ)生物処理槽
答え【1】
この問題は消去法である程度絞り込むことができます。雨水処理施設なので、比較的にきれいな水なのでそんなに複雑な処理は必要ありません。
雨水処理には普通生物処理は必要ありません。
従って流量調整槽は必要ありません。また臭いも色もないので活性炭吸着装置も必要ありません。
そうなれば答えは(1)になります。
基本的に雨水処理には雨水に混入する砂や葉っぱ等を処理する程度で十分です。
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