平成30年度建築物の環境衛生「過去問題解説1」
問題21
環境基本法に基づく環境基準の説明として、最も不適切なものは次のうちどれか。
- 人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準である。
- 実験室内での動物実験などの生物学的研究を判断に用いている。
- 罹患状況の疫学調査を判断に用いている。
- 経験的に証明されている有害濃度を基礎とした安全度を考慮している。
- 地球環境を保全する上で維持することが望ましいものである。
答え【5】
(5)が誤りです。地球環境が誤りで正しくは生活環境です。これは、平成5年に環境基本法が制定され、その中で環境基準として
「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする」と定められています。
従って(1)が正しく(5)は誤りです。 (2)(3)(4)についても
環境基準の設定のための科学的判断基準として以下の3点が挙げられています。
- 実験室内での動物実験等の生物的研究
- 汚染度の異なる地域についての生物学的機能の変化、罹患状況等の疫学調査
- 経験的に証明されている有害濃度、労働衛生上の許容濃度を基礎とした安全度の検討
問題22
作業区分とその例との組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。なお、単位のm2は体表面積である。
作業区分 例
- 安静(平均代謝率65W/m2)―――――仰臥位(仰向け)
- 低代謝率(平均代謝率100W/m2)――――軽い作業
- 中程度代謝率(平均代謝率165W/m2)――――――のこぎりをひく
- 高代謝率(平均代謝率230W/m2)――――コンクリ―トブロックを積む
- 極高代謝率(平均代謝率290W/m2)――――階段を上る
答え【3】
安静時の平均代謝率65W/m2から徐々に代謝率が増えていき極高代謝が最も平均代謝率が高くなっていきます。この問題は以下に表でまとめていますので、どの程度の作業が低代謝率、中程度代謝率、高代謝率、極高代謝率をしっかりイメ―ジをつかんでください。
区分 | 平均代謝率 | 例 |
---|---|---|
安静 | 65W/m2 | 安静、仰臥位(仰向け) |
低代謝率 | 100W/m2 | 楽な座位:軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記) 手および腕の作業(小さいペンチツ―ル、点検、組み立てや軽い材料の仕分け) 腕と脚の作業 (普通の状態での乗り物の運転、足のストレッチやペダルの操作 |
中程度代謝率 | 165W/m2 | 継続した頭と腕の作業:釘打ち盛土 腕と脚の作業:トラックのオフロ―ド操縦 腕と胴体の作業:空気ハンマの作業、トラクタ組み立て、しっくい塗り 中くらいの重さの材料を継続的に持つ作業:草むしり、草堀り、果物や野菜を摘む 軽量や荷車や手押し車を押したり引いたりする:3.5~5.5km/hの速さで歩く |
高代謝率 | 230W/m2 | 強度の腕と導体の作業:材料を運ぶ:シャベルを使う:大ハンマ作業:のこぎりをひく:硬い木にかんなをかけたりのみで彫る 草刈り:掘る:5.5~7km/hの速さで歩く、重い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする:コンクリ―トブロックを積む |
極高代謝率 | 290W/m2 | 最大速度の速さでとても激しい活動:斧を振るう 激しくシャベルを使ったり掘ったりする:階段を登る:走る、7km/hより速く歩く |
従ってのこぎりをひくは高代謝率になります。
- 平成29年問題25
問題23
高齢者の快適温度に関する記述として、最も不適当なものは次のうちどれか。
- 一般に若年者に比べ、暖かい温度を好むとされている。
- 冬季には、室温は若年者と比較して高い場合が多い。
- 冬季には、若年者に比べ深部体温は低い傾向にある。
- 放射熱がない場合、高齢者の8割を満足させる気温の範囲は青年に比べ狭い範囲となる。
- 高齢者では、寒冷環境に曝露された際の血圧の変動が若年者に比べ顕著である。
答え【2】
(2)は正確には冬季には、室温は若年者と比較して低い場合が多い。
高齢者は身体活動量が少なく、代謝量も少ないため、一般に若年者より暖かい室温が好むとされています。一方
、冬期の住宅内の温度を測定してみると、高齢者の室温は若年者と比較して低い場合が多い。
この原因として
、高齢者の寒さに対する感受性の低下が考えられます。
その結果高齢者は室温が下がっていても気づかない傾向があります。
同時に測定した深部体温は、高齢者の方が低く、高齢者は低体温症になりやすい。備考:深部体温が35℃未満を低体温症と呼びます。
- 平成27年問題24
問題24
熱中症の記述として、最も不適当なものはどれか。
- 熱失神は、頭頸部が直射日光などにさらされたことにより抹消血管の拡張を生じることによって起こる。
- 熱射病では、体温調整中枢の機能に障害を来し、自力での体温調整ができず体温が急激に上昇する。
- 熱疲労は、多量の発汗により体内の水分や塩分が不足することに加え、全身的な循環不全による重要諸臓器の機能低下によって起こる。
- 熱けいれんは、過剰な発汗により血液中の塩分が濃縮されることによって起こる。
- 熱射病の治療は、全身の冷却が第一であるが冷やし過ぎには十分に注意する。
答え【4】
熱けいれんは、炎天下での長時間の仕事やスポ―ツ(野球やサッカ―)で、大汗をかいたあとに起こりやすい症状です。汗をかくと、私たちのからだからは水分だけでなく、塩分(ナトリウム)などのミネラル類も大量に失われます。とくに血液中の塩分濃度が低下すると、電解質の不足から筋肉がけいれんを起こしやすくなります。(低ナトリウム血症)
熱けいれんが起きた場合に注意したいのは、水だけを飲むと血液中の塩分濃度がさらに低下し、症状が悪化しやすいことです。
ナトリウムを含むスポ―ツドリンクや、食塩水(水500ミリリットルに対し、塩3~4グラム程度)を飲むようにしましょう。
(軽症) | 熱失神 | 皮膚血管の拡張により血圧が低下し、脳血流が減少して起こる一過性の意識消失 |
熱けいれん | 低Na血症による筋肉のけいれんが起こった状態 | |
(中等症) | 熱疲労 | 大量の汗により脱水状態となり、全身倦怠感、脱力、めまい、頭痛、吐気、下痢などの症状が出現する状態 |
(重症) | 熱射病 | 体温上昇のため中枢神経機能が異常をきたした状態 |
日射病 | 上記の中で太陽光が原因で起こるもの |
- 令和2年問題26
- 令和元年問題26
- 平成28年問題27
- 平成27年問題25
問題25
冬季における暖房時の留意事項の組合せとして、最も適当なものは次のうちどれか。
ア 床上0.1mと1.1mの温度差を、3℃以下とする。
イ 気流は、1.5m/s程度に保つ。
ウ ウォ―ムビズの導入によりCO2排出量を削減できる。
エ 低湿度では、呼吸器疾患に罹患しやすい。
- アとイとウとエ
- アとウとエ
- アとエ
- イとウとエ
- ウとエ
答え【2】
(ア)については、正しい。
暖房時には暖かい空気は上昇するので、床上の気温と天井付近の気温の温度差が10℃以上になることも珍しくなく、足元が冷え頭がほてると
、不快感が増して作業能率が低下することから、ISOは、足部の気温を頭部よりも3℃以上低くしないように推奨しています。
(ウ)についても正しい。
ウォ―ムビズは、暖房に必要なエネルギ―使用量を削減することによって、CO2の発生を削減し地球温暖化を防止することが目的です。
(エ)についても正しい。
冬にインフルエンザ等にかかりやすいのは冬が湿度が低くなるからです。
低湿度になってしまった場合鼻や喉の粘膜が乾燥し、ウイルス等に感染しやすくなる。
(イ)が誤りです。
気流1.5m/sはビル管理法の環境衛生管理基準は0.5m/s以下であることから明らかに誤りです。
ただ、冬期では基準値に近い気流でも不快を生じることもあり、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)では、冬期には0.15m/s以下を推奨している。
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