令和3年度ねずみ・昆虫等の防除「過去問題解説3」
問題176
微生害虫等が媒介する感染症とその媒介者の組合せとして、最も不適当なものはどれか。
- チクングニア熱―――――ヒトスジシマカ
- 日本紅斑熱―――――――コロモジラミ
- ウエストナイル熱――――アカイエカ
- レプトスピラ症―――――ネズミ
- マラリア――――――――ハマダラカ
答え【2】
コロモシラミは発疹チフスです。日本紅斑熱はマダニです。
疾病と媒介動物及び害虫による被害
疾病と媒介動物
疾病 | 媒介動物 |
---|---|
消化器系感染症(O-157) | イエバエ |
小児喘息 | ヒョウヒダニ |
サルモネラ症 | ドブネズミ |
レプトスピラ症 (ワイル病) | ドブネズミ |
疥癬 | ヒゼンダニ |
つつがむし病 | ツツガムシ |
マラリア | ハマダラカ |
ペスト | ノミ |
ライム病 | マダニ |
赤痢 | ハエ |
日本脳炎 | コガタアカイエカ |
発疹チフス | コロモシラミ |
ウエストナイル熱 | アカイエカ |
デング熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ |
ジカウイルス感染症 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ |
フィラリア症 | アカイエカ、ヒトスジシマカ |
アナフィラキシ―ショック | スズメバチ類、アシナガバチ |
日本紅斑熱 | マダニ |
現在媒介する感染症は確認されていない。 | チカイエカ、トコジラミ |
問題177
防除に用いる機器類と薬剤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 隙間や割れ目等の細かな部分に粉剤を処理する場合には、電動散粉機を使用する。
- 噴霧器のノズルから噴射される薬液の噴射パタ―ンの一つとして、扇型がある。
- ミスト機は、汚水槽の蚊やチョウバエの防除に使用される。
- 液化炭酸ガス製剤には、有機溶媒や水は使用されていない。
- 粘着式殺虫剤は、昆虫の死骸が周囲に落ちることが少ない。
答え【1】
散粉機には手動式、電動式、エンジン式があるが隙間や割れ目等の細かな部分に粉剤を処理する場合には手動式を用いります。広範囲の処理には電動式を用いります。
問題178
建築物衛生法に基づくねずみ・昆虫等の防除に関する次の文章の[ ]内に入る語句の組合せとして、最も適当なものはどれか。
ねずみ等の防除においては、IPM(総合的有害生物管理)の理念に基づく防除を実施しなければならない。この防除においては、[ ア ]や[ イ ]、防除法の選定、[ ウ ]等が重要視され、防除法の選定においては、[ エ ]や侵入防止対策を優先的に検討する必要がある。
- (ア)使用薬剤の選定――(イ)防除目標の設定――(ウ)利用者の感覚的評価――(エ)発生時対策
- (ア)生息密度調査――(イ)防除目標の設定――(ウ)生息指数による評価――(エ)発生時対策
- (ア)使用薬剤の選定――(イ)化学的対策――(ウ)使用薬剤の種類――(エ)発生時対策
- (ア)生息密度調査――(イ)防除目標の設定――(ウ)生息指数による評価――(エ)発生予防対策
- (ア)発生時対策――(イ)化学的対策――(ウ)利用者の感覚的評価――(エ)発生予防対策
答え【4】
ねずみ等の防除においては、IPM(総合的有害生物管理)の理念に基づく防除を実施しなければならない。この防除においては、[ 生息密度調査 ]や[ 防除目標の設定 ]、防除法の選定、[ 生息指数による評価 ]等が重要視され、防除法の選定においては、[ 発生予防対策 ]や侵入防止対策を優先的に検討する必要がある。
問題179
ねずみ・昆虫等の防除に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- ネズミや害虫に対しては、薬剤処理とトラップによる対策を優先的に実施する。
- IPMにおける警戒水準とは、すぐに防除作業が必要な状況をいう。
- 生息密度調査の結果が許容水準に該当した場合、原則として6ヵ月以内に一度、又は発生の多い場所では、2ヵ月以内に一度の定期的な調査を継続する。
- チャバネゴキブリが発生している厨房内の5箇所に3日間配置して粘着トラップでの捕獲数が、成虫30匹と幼虫120匹であった場合のゴキブリ指数は30である。
- ゴキブリ防除用として、医薬品や医薬部外品として承認された殺虫剤の代わりに使用できる農薬がある。
答え【3】
正しいのは(3)です。(1)については薬剤処理やトラップに頼らない対策を優先的に実施する。
IPMとは殺虫剤に頼らない防除と殺虫剤を用いた防除とを組合わせた方法である。そのためには環境の整備、清掃に努めることで発生を最少に抑え、発生調査に基づき、状況に合った防除対策を講じる。 薬剤使用にあたっては環境に配慮し、少ない薬量で、労力、経済負担を少なくする。防除に先立ち、ゴキブリの生息状況調査で生息場所と生息密度を知ること、防除後には効果
つまり、まずはネズミや害虫が発生しないための環境整備等を再優先課題にすること。
(2)はIPMにおける警戒水準とは、放置すると今後、問題になる可能性がある状況をいう。
(4)のゴキブリ指数の計算方法は
ゴキブリ指数=総捕獲総数÷設置トラップ数÷設置日数
ゴキブリ指数=150÷5÷3=10
になります。
(5)はゴキブリ防除用として農薬は一切使用できない。
ねずみ、害虫対策の基本
建築物内に発生するねずみ、害虫の防除対策の基本は、室内への侵入防止対策と発生環境の清掃や整理などによる発生源対策(発生予防対策)です。
また、現に発生しているネズミ等に対しては、薬剤等による発生時対策を行います。
防除は、発生時対策より発生源対策を重視し、まずは、発生源対策を行う必要がある。
ペストコントロ―ル
ねずみ、害虫を防除することをペストコントロ―ルという。
ペストとは、ねずみや害虫など有害な生物を指す。コントロ―ルは「制御する」という意味になりペストコントロ―ルは「有害生物防除」という意味になる。
- ベクタ―コントロ―ル(媒介動物防除)
- 感染症の媒介を絶つための手段として行う害虫等の防除である。
- ニュ―サンスコントロ―ル(不快害虫防除)
- 単なる刺咬や不快対策として行う害虫等の防除である。
IPM
IPMとは「総合的有害生物管理」と呼ばれ、建築物環境衛生維持管理要領に導入されたねずみ・害虫管理の考え方(理念)である。
総合的有害生物管理に基づく防除
ねずみ等の防除を行うに当たっては、建築物において考えられる有効・適切な技術を組合わせて利用しながら、人の健康に対するリスクと環境 への負荷を最小限にとどめるような方法で、有害生物を制御し、その水準を維持する有害生物の管理対策である総合的有害生物管理の考え方を取り入れた 防除体系に基づき実施すること。
調査の基本的な考え方
ねずみ・昆虫等は種によって発生源や行動する場所が異なり、また時期や場所によって発生密度が異なることから、状況に応じた対策を実施する必要がある。 従来見られてたように、定期的に、統一的に薬剤を散布するのではなく、あらかじめ発生場所や発生密度を生息実態調査によって把握してから、その結果に応じた対策を施すべきである。
捕獲数や証跡は、できる限り1日1トラップ当たりの平均捕獲数を捕獲指数として示したり、一定面積当たりの証跡数から求めた値を指数と示す。
上記赤字は確実に覚えましょう。
ゴキブリ指数
ゴキブリ指数は、害虫駆除業者がゴキブリを駆除するための指標です。
算出された指数に基づいて、衛生上の合否を判断します。
ゴキブリ指数は捕獲総数 ÷ (配置トラップ数 X 配置日数)として求める。
建築物内に発生するねずみや害虫に対する防除はまずは、発生予防対策に重点を置く。←これ、とっても重要です。
以前は、まともに調査をしないままただ定期的に闇雲に薬剤を撒くなどを行ってきました。
その結果ねずみ・昆虫等の薬剤の抵抗性の発達(薬剤が効かなくなる)や環境への悪影響が認められるように なりました。
その反省点からビル管理士法ではIPMによる防除が求められている。
防除の標準的な目標水準
許容水準 | 環境衛生上、良好な状態をいう。施行規則および告示に基づき、 6ヵ月以内に一度、発生の多い場所では2ヵ月以内に一度、定期的に調査を継続する。 |
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警戒水準 | 放置すると今後、問題になる可能性がある状況をいう。 |
措置水準 | ねずみや害虫の発生や目標をすることが多く、すぐに防除作業が必要な状況をいう。 |
許容水準:以下のすべてに該当すること。
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警戒水準:以下のすべてに該当すること。
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措置水準:以下の状況のいずれか一つ以上に該当する。
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問題180
衛生害虫の防除等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 作用機構の異なる殺虫剤のロ―テ―ション処理を行うことによって、殺虫剤抵抗性の発達を抑えることができる。
- ニュ―サンスコントロ―ルとは、感染症を媒介する衛生動物の防除をいう。
- 吸血昆虫の中には、幼虫、成虫、雌、雄ともに吸血する種類がある。
- 昆虫等に対する不快感は、主観的なものである。
- 昆虫成長制御剤(IGR)で処理しても、成虫密度が速やかに低下することはない。
答え【2】
ニュ―サンスコントロ―ルとは、単なる刺咬や不快対策として行う害虫等の防除である。