令和3年度ねずみ・昆虫等の防除「過去問題解説1」
問題166
蚊の防除に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 昆虫成長制御剤(IGR)は、幼虫、蛹(さなぎ)、成虫の全てのステ―ジにおいて効果が認められる。
- ULV処理は、短期間の効果しか期待できない。
- 浄化槽内の防除効果は、柄杓によりすくい取られた幼虫数によって判定する。
- 浄化槽内の防除効果は、粘着トラップによる成虫の捕獲数によって判定する。
- 樹脂蒸散剤は、密閉性が保たれている浄化槽などで効果を発揮する。
答え【1】
昆虫成長制御剤(IGR)は、昆虫の変態や脱皮をコントロ―ルしているホルモンのバランスを狂わせることによって、昆虫の脱皮や羽化を阻害し、その結果として死に至らせるという殺虫剤の総称です。成虫に対する致死効果が認められない。
URL処理は、成虫に対する速効性が認められる。
樹脂蒸散剤とは、一般にパポナプレ―トやパナプレ―トのことで、排水槽などの密閉空間に効果を発揮し1~3ヵ月間持続します。
問題167
蚊の主要な発生源や生態に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- コガタアカイエカは、水田や湿地等の水域に発生する。
- ヒトスジシマカは、小型の人口容器や雨水ますに発生する。
- アカイエカは、地下の浄化槽や湧水槽に発生する。
- チカイエカは、最初の産卵を無吸血で行うことができる。
- アカイエカは夜間吸血性を示す。
答え【3】
アカイエカは下水溝や雨水ます、防火用水槽でよく発生し、夜間に屋内に侵入して吸血する最も普通の蚊です。地下の浄化槽や湧水槽に発生するのはチカイエカ(地下イエカ)です。
蚊の種類
屋内で発生する蚊はチカイエカ1種だけです。
国内で全体ではおよそ113種類の蚊が記録されている。主な蚊の種類としては、チカイエカ、アカイエカ、コガタアカイエカ、シナハマダラカ、ヒトスジシマカなどがある。
チカイエカ
- 日本国内の屋内で確認されている唯一の蚊である。
- 世界の温帯地域に広く分布し、ビル内部で発生する蚊はほとんどこの種類である。
- 九州から北海道の都市には普通に見られる。
- チカイエカは外見的にはアカイエカやネッタイイエカに似ており、外見的には区別するのは困難である。
- チカイエカは羽化後初めての産卵は吸血しなくても行える。その後は激しく人から吸血する。
- チカイエカの卵は卵塊として水面に産み落とされる。1卵塊の卵数は50~80個
- チカイエカは冬期でも休眠せず暖房された室内では盛んに吸血することから冬の蚊といわれる。
- チカイエカは試験管のような狭い場所でも交尾が可能で、また浄化槽内のような暗黒の条件下でも休眠せず交尾を行い産卵する。
- チカイイエカが媒介する感染症は今のところ知られていない。
アカイエカ
- アカイエカは屋外で発生して屋内に侵入する。
- 夜間に屋内に侵入して吸血するよく見られるカ
- アカイエカのメスの成虫は有機物の多い下水溝やどぶ川の水面に静止して舟形の卵塊を産む。
- ニワトリや野鳥からも盛んに吸血する。
- 秋に羽化した成虫は休眠に入り、冬期には気温が上昇しても吸血活動をしない。
コガタアカイエカ
- コガタアカイエカは水田から発生する。
- 日本脳炎ウイルスを媒介する。
- 夜間に吸血する。
ヒトスジシマカ
- 公園、墓地等の日陰ややぶに多く生息する。
- 昼間に盛んに吸血する
- 雨水ますなどの人工的にできた狭い水域や屋外の空き缶などの溜り水からもよく発生する。
- 血を吸われると大変強い痒みを生じる。
シナハマダラカ
- 幼虫の発生源は水田や沼
- マラリア原虫の媒介者
- 成虫は夜間活動する。
蚊の主な生態について記述していますが、ここではまず蚊の生息場所は確実に覚える。
チカイエカとアカイエカは外見的には区別することができない。
コガタアカイエカ→日本脳炎ウイルスを媒介する。
問題168
ゴキブリの生態に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- ゴキブリの活動場所における排泄物による汚れのことを、ロ―チスポットという。
- 日本に生息するゴキブリの多くの種類は、屋外で生活している。
- ゴキブリには一定の潜み場所があり、日中はほとんどその場所に潜伏している。
- 日本に生息するゴキブリには、卵から成虫までに1年以上を要する種がいる。
- ゴキブリの食性は、発育段階によって変化する。
答え【5】
ゴキブリの共通した習性として、幼虫、成虫とも同じ場所で活動し、同じ食物を摂取するとあります。
ゴキブリの習性
- 夜間特定の時間に潜伏場所から出現し、摂食、摂水行動を起こす。
- 体内に組み込まれた体内時計により、約24時間を周期とする行動が見られる。
- 潜伏場所の辺りに糞などの汚れが多く見られ、殺虫剤を処理する場所の目安になる。
- 集合フェロモンを糞中に分泌してこれによって群れる。
- 雑食性で、食品類、汚物など様々なものを餌とする。
- ゴキブリは幼虫、成虫とも同じ場所で活動し、同じ食物を摂取する
- 物の縁や隅を通る傾向があり、壁から5cm程度の隅に活動が集中する。
- ゴキブリは不完全変態である。
不完全変態:卵→幼虫→成虫
つまり、ゴキブリは蛹にならない
問題169
ゴキブリの防除に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 薬剤は、生息場所を中心に、ある程度広範囲に処理することが望ましい。
- 防除作業後には、効果判定調査を行うことが重要である。
- 毒餌処理に用いられる薬剤には、ディ―トやイカリジンを有効成分とした製剤がある。
- よく徘徊(はいかい)する通路などに、残効性の高い有機リン剤やピレスロイド剤を処理する。
- ペルメトリンを有効成分とする水性乳剤をULV機で散布すると、追い出し効果が期待できる。
答え【3】
ディ―トやイカリジンは昆虫などの忌避剤(虫よけ剤)として用いられる化合物である。毒餌処理に用いられる薬剤には、ホウ酸やヒドラメチルノン、フィプロニル、インドキサカルブ、ジノテフランなどを有効成分とした製剤がある。
問題170
ダニに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- ツメダニの被害対策には、ヒョウヒダニ類やチャタテムシ類の防除が重要である。
- 家屋周辺のマダニ類対策では、ペットの衛生管理が重要である。
- ヒゼンダニは皮膚内に侵入し、吸血する。
- コナダニ類の対策では、畳表面の掃除機による吸引及び通風乾燥が基本となる。
- スズメサシダニが発見された場合には、野鳥の巣が家屋の天井や壁に存在する可能性が高い。
答え【3】
ヒゼンダニは、ヒトの皮下に内部寄生し疥癬症の原因種であるが吸血はしない。ダニ類の生態と防除
ダニ
ダニは分類学的にはくもに近く昆虫ではない。
日本国内で知られる3000種のダニのうち屋内に居て、さらに吸血する種はごくわずかのダニである。
ダニの生態
- 成虫で4対の脚をもち、羽根や触角はない。
- ダニの体は、口器がある顎体部と、頭、胸、腹が融合した胴体部の2つに分かれている。
- 幼虫では脚は3対、若虫、成虫で4対である。
ダニの種類
ダニの種類には吸血性ダニ、動物寄生性ダニ、屋内塵性ダニ、植物由来のダニ、人刺咬性のダニ、人寄生性のダニに分類される。
- 吸血性ダニ・・・・・・イエダニ、マダニ
- 動物寄生性ダニ・・・・イエダニ(ネズミに寄生)、スズメサシダニ(スズメに寄生)、トリサシダニ(鳥に寄生)
- 屋内塵性ダニ・・・・・ヒョウヒダニ、コナダニ、ツメダニ
- 人刺咬性のダニ・・・・ツメダニ
- 人寄生性のダニ・・・・ヒゼンダニ
- 植物由来のダニ・・・・ヒメハダニ
ヒョウヒダニ
- 人のふけを食べる。
- 人は刺さない
- 温度25℃で湿度60%以上の湿気があるところで繁殖しやすい。
- 死骸や糞が気管支喘息の原因になる。
イエダニ
- ネズミの巣が発生源でネズミに寄生する。
- 宿主であるネズミがいなくなると人からも吸血することがある。
- 防除対策にはネズミの巣を除去するのが有効である。
ケナガコナダニ
- 新しい畳によく発生する。
- 保存食品からも発生する。
- 人への刺咬はない。
ツメダニ
- ヒョウヒダニや他のダニ類を捕食する。
- 人を刺すこととがあるが吸血はしない。
シラミダニ
- 昆虫類に寄生する。
- カイコに寄生することで知られているが偶発的に人を刺すが吸血はしない。
ヒゼンダニ
- 人の皮膚に内部寄生する。
- 疥癬症を引き起こす。