令和3年度建築物の構造概論「過去問題解説1」
問題91
建築物と日射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 夏期における建築物の日射受熱量を減少させるには、東西の壁面・窓面はなるべく小さくする方が有利である。
- 直射日光は天気によって大きく変動するため、昼光を照明として利用する場合は、天空光のみを利用する。
- 内付けブラインドの日射遮蔽効果は、50%程度しか望めない。
- 夏至の日の南壁面の日積算日射量は、低緯度に位置する那覇の方が東京より大きい。
- ライトシェルフとは、部屋の奥まで光を導くよう直射日光を反射させる庇(ひさし)のことである。
答え【4】
(4)の場合は緯度が高いほど日射の入射角は小さくなるので日射量は多くなります。従って(4)の問題は緯度が高い東京の方が日積算入射量は大きくなることになります。
問題92
建築士法で定義している設計図書に含まれないものは、次のうちどれか。
- 仕様書
- 平面図
- 断面図
- 施工図
- 設備図
答え【4】
施工図は含まれません。設計図書には主なものとして、周辺敷地図、配置図、平面図、立面図、断面図、各部の詳細図、展開図、標準図、構造図面、設備図、仕様書、構造の計画署等があります。
設計図面は意匠図面、構造図面、設備図面に大別される。
主な図面
配置図 | 建築物と敷地の関係を示す |
平面図 | 部屋の配置を平面的に示す |
立面図 | 外観図ともいう。東西南北に面する4面を描く |
断面図 | 建築物を垂直に切断して内部の立面を示す。主要部を2面以上描く |
天井伏図(ふせず) | 天井の意匠や仕上げ、照明器具、空調器具の大きさ、配置を示す。 天井伏図(てんじょうふせず)とは部屋の天井の仕上げを床から見上げた場合の見取図。天井仕上げ材により両サイドにどれくらいの半端モノを使うか、目地の割付の寸法などを指示するために利用される図面のこと。 |
仕様書 | 建築工事における材料や製品の品質、性能、施工方法、製造者等を指示するもの |
現寸図 | 意匠的に又は構造的に複雑な部分を現尺で描く図面。現寸図は建築基準法に定める設計図書に含まれない。 |
透視図 | 雰囲気や空間の構成を理解しやすいように建築内部を透視して描いた図 |
日影図 | 冬至における日照状態を描く |
矩計図 | 断面詳細図の1種。建物の代表的な部分の外壁の詳細を示す。 建物の一部を切断して、 納まりや寸法等を細かく記入した断面図の詳細版です。 |
展開図 | 各室の内部壁面を北から時計回りに描いた図をいう。 |
問題93
鉄筋コンクリ―ト構造とその材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- モルタルは、砂、セメント、水を練り混ぜたものである。
- 梁のあばら筋は、一般に135°以上に曲げて主筋に定着させる。
- 柱の帯筋は、主にせん断力に対して配筋される。
- 柱の小径は、構造耐力上主要な支点間の1/15以上とする。
- 直接土に接する床において、鉄筋に対するコンクリ―トのかぶり厚さは、3cm以上としなければならない。
答え【5】
直接土に接する壁、柱、床布基礎の立上り部分のかぶり厚さは4cm以上としなければならない。コンクリ―トのかぶり厚さ
かぶり厚さとは鉄筋とコンクリ―ト表面との距離。
耐力壁、柱、梁 | 3cm |
耐力壁以外の壁、床 | 2cm以上 |
直接土に接する壁、柱、床 布基礎の立上り部分 | 4cm以上 |
基礎(布基礎の立上り部分を除く。) | 捨てコンクリ―トの部分を除いて、6cm以上 |
問題94
鉄骨構造とその材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 降伏比の大きい鋼材は、靭性に優れる。
- 建築構造用鋼材は、降伏点又は耐力の上限と下限が規定されている。
- 鋼材の強度は温度上昇とともに低下し、1,000℃ではほとんど零となる。
- 軟鋼の炭素量は0.12~0.30%である。
- 高力ボルト接合の締め付け時の余長は、ねじ山3以上とする。
答え【1】
降伏比=降伏点/引張強さ塑性変形能力(靭性)が高いのは、降伏比が小さい鋼材。
つまり
(1)は
>降伏比の小さい鋼材は、靭性に優れる。 この問題は一級建築士の問題なので一応リンクを貼っておきます。
問題95
建築物の荷重又は構造力学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 地震力を計算する場合、住宅の居室の積載荷重は、事務室よりも小さく設定されている。
- 曲げモ―メントは、部材のある点において部材を湾曲させようとする応力である。
- 片持ち梁の先端に集中荷重の作用する梁のせん断力は、梁の固定端部で最も大きい。
- ラ―メン構造の部材に生じる応力には、曲げモ―メント、せん断力、軸方向力がある。
- 建築物に作用する土圧は、常時荷重として分類されている。
答え【3】
片持ち梁とは、1点を固定端とし他端を自由端とした梁です。以下のようなものです。片持ち梁の最大のせん断応力は、片持ち梁の支点に生じる反力と同じ値です。
先端に集中荷重Pの作用する片持ち梁の場合、せん断応力=反力=Pとなります。
片持ち梁のせん断応力Qの公式を下記に示します。
Q=P
つまり、梁のせん断力は、梁の固定端部で最も大きくなるわけではありません。
せん断力はどの箇所でも一定となります。