令和3年度空気環境の調整「過去問題解説5」
問題66
空気調和設備の熱源方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 地域冷暖房システムは、個別熱源システムに比べて、一般に環境負荷は増加する。
- 蓄熱システムは、電力負荷平準化、熱源装置容量削減に効果がある。
- 電動冷凍機とボイラを組み合わせる方式は、夏期に電力消費量がピ―クとなる。
- 直焚吸収冷温水機は、1台の機器で冷水のみ又は温水のみだけでなく、これらを同時に製造することができる。
- 電力需要を主として運転するコ―ジュネレ―ション方式では、空気調和やその他の熱需要に追従できない場合がある。
答え【1】
地域冷暖房方式は大気汚染防止等の公害防止対策が徹底され、個別熱源に比べ、熱源が集中することから高効率の大型機器の使用が可能となり、環境負荷の低減となる。蓄熱槽(蓄熱方式)
蓄熱の目的は、熱を計画的に効率よく蓄積し、必要な時に必要なだけ取り出して利用することがある。このため、間欠運転対応、熱源容量削減、熱回収、排熱利用、太陽熱利用、深夜電力利用等の目的で使用される。蓄熱槽の種類
- 密閉式
- 槽が密閉構造で配管や機器の摩擦損失分だけの動力ポンプ容量でよい。
- 開放式
- 槽が大気に開放されている。密閉型に比べ、ポンプの実揚程の分だけ余分な動力が必要で、電気量が高くなる。開放されているので水質汚染に注意が必要。
蓄熱方式のメリット
- 安価な深夜電力の使用が可能
- 熱源機器が故障したときや停電時に短期間であるが、水槽の熱で対処できる
- 夜間運転では凝縮圧力が低くなりCOPが向上する。
- ピ―クカットにより、熱源装置容量を小さくできる。(これにより、設備費、受変電設備容量、及び機械室面積を小さくできる)
- 部分負荷運転の対処が容易にできる(テナントが延長するときなどに)
- 蓄熱槽の水を火災時に消火用水として利用できる。
蓄熱方式のデメリット
- 開放式水槽の場合は実揚程がかかるためポンプの動力が増加する
- 氷蓄熱では蒸発器出口の冷媒温度が低くなりCOPが低下する
- 水槽の構築費が高価
- 夜間運転移行により管理人件費の増大
- 槽内の水混合の、熱損失または熱取得時によって、一般的に蓄熱した熱量を全部有効にくみあげることができない。蓄熱槽の蓄熱効果は一般に60~85%である
地域冷暖房方式
地域冷暖房方式は、熱源プラントにて集中的に製造した熱媒を、一定地域の多数の建築物や施設に供給する、冷暖房するシステムをいう。
地域冷暖房方式の特徴- 地域冷暖房方式は大気汚染防止等の公害防止対策が徹底され、個別熱源に比べ、熱源が集中することから高効率の大型機器の使用が可能となり、環境負荷の低減となる。
- 熱源プラントから熱媒体を需要家に供給するための地域配管が必要となり、そのためのスペ―スが必要である。
- ごみ焼却廃熱や未利用エネルギ―の活用がし易く省エネルギ―が図れる。
- 設備の能力が21GJ/h以上で不特定多数の需要家に熱供給する能力を持つ施設は、熱供給事業法の適用を受ける熱供給事業として経済産業大臣の許可を受けなければならない。
- 普通各建築物に最大負荷は同時刻に発生することはないので熱源プラントの設備容量は、各建物の最大負荷の合計より小さくすることが可能である。
問題67
図は、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける冷媒の標準的な状態変化をモリエル線図上に表したものである。圧縮機の出口直後に相当する図中の状態点として、最も適当なものはどれか。
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
答え【1】
蒸気圧縮機の冷凍サイクルとモリエル線図
蒸気圧縮冷凍機の冷凍サイクルとモリエル線図です。
サイクル | 行程 | 説明 | 温度 | 圧力 | 比エンタルピ― |
---|---|---|---|---|---|
①→② | 圧縮 | 冷媒は過熱蒸気となって圧縮機へ | 上昇 | 上昇 | 増加 |
②→③ | 凝縮 | 過熱蒸気から湿り蒸気、液体冷媒へ | 一定 | 一定 | 減少 |
③→④ | 膨張 | 膨張弁を通り、液体冷媒から湿り蒸気 | 低下 | 低下 | 一定 |
④→① | 蒸発 | 湿り蒸気から過熱蒸気へ | 一定 | 一定 | 増加 |
圧縮機 | 気化した冷媒を圧縮して高圧高温の冷媒とする。 |
凝縮器 | 高温の冷媒ガスが放熱し、凝縮して液体冷媒となる。 |
膨張弁 | 次の蒸発器での蒸発に備えて、冷媒を低圧低温の状態にする。 |
蒸発器 | 液体冷媒が吸熱して蒸発、冷水を冷やす。 |
問題68
熱源方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- ヒ―トポンプ方式は、1台で温熱源と冷熱源を兼ねることができる。
- 蓄熱システムにおける顕熱利用蓄熱体として、氷、無機水和塩類が用いられる。
- ヒ―トポンプ方式は、地下水や工場排熱等の未利用エネルギ―も活用することができる。
- 太陽熱を利用した空調熱源システムは、安定的なエネルギ―供給が難しい。
- 吸収式冷凍機+蒸気ボイラ方式は、空調以外に高圧蒸気を使用する用途の建物で用いられることが多い。
答え【2】
不適当なのは(2)になります。無機水和塩類とはいわゆるブラインのことです。
(2)については氷は潜熱利用蓄熱体です。
水が顕熱利用蓄熱体になります。
(1)と(3)についてはヒ―トポンプ方式の特徴について述べています。
水熱源ヒ―トポンプ方式では、冷房時冷却水と暖房時低温温水の2系統を同一配管とし、この熱源水が採熱源として用いられることから、再生可能エネルギ―利用がしやすい特徴もある。
(4)は太陽熱利用でその日の天候に作用されやすいという特徴があり安定的なエネルギ―供給が難しい。
(5)は吸収式冷凍機+蒸気ボイラ方式を使用することにより高圧蒸気を使用できる。
従って(2)が不適当と思われます。
問題69
冷却塔に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 開放型冷却塔は、密閉型と比べて小型である。
- 開放型冷却塔内の冷却水は、レジオネラ属菌の繁殖に注意が必要である。
- 開放型冷却塔は、密閉型冷却塔に比べて送風機動力が増加する。
- 密閉型冷却塔は、電算室、クリ―ンル―ム系統の冷却塔として使用される。
- 密閉型冷却塔は、散布水系統の保有水量が少ないため、保有水中の不純物濃度が高くなる。
答え【3】
冷却水と空気の熱交換は間接的となるので、冷凍機に廻る冷却水の水質悪化の心配がない。しかし同じ冷却能力を得るのに開放型より大型になる。また熱交換器による通風抵抗の増加に伴い送風機動力が増加するうえ、冷却ポンプとは、別に散水ポンプが必要で高価である。
冷却塔
冷却塔は大きく分けて開放型と密閉型に分かれる。開放型冷却塔
開放型冷却塔は、充填材、下部水槽、散水装置、送風機等から構成される。
冷却水は主に自ら蒸発して、その潜熱により冷却される。(外気が冷却水より低い乾球温度であれば、顕熱を空気に渡しても冷やされる)その場合でも、いくらでも蒸発していくらでも冷却されるのではなく周囲空気の 湿度より限界がある。冷却塔内の冷却水表面は丁度濡れたガ―ゼで包まれて、気流の当たっている湿球温度計と同じ状態になり、その時測っているのは冷却塔入口空気の湿球温度である。
冷却水の温度は理論上この湿球温度よりも低くはなり得ない。冷却水の出口温度と外気湿球温度の差をアプロ―チといい、通常は5℃程度である。 一般に外気の湿球温度が低く、冷却水温度が低い方が冷凍機の凝縮温度が低くなってCOPが向上する。
密閉型冷却塔
冷却水と空気の熱交換は間接的となるので、冷凍機に廻る冷却水の水質悪化の心配がない。しかし同じ冷却能力を得るのに開放型より大型になる。
また熱交換器による通風抵抗の増加に伴い送風機動力が増加するうえ、冷却ポンプとは、別に散水ポンプが必要で高価である。
冷却塔の性能低下の原因
- 散水の不均一
- 送風装置の不具合
- 充填物破損
- 外気の湿球温度が設計値を上回った時
密閉型は、冷凍機への循環冷却水の大気による水質悪化はないが、塔内の循環散水(一次冷却水)は水質悪化する。
一次冷却水は大気の汚染物質などによって汚染され、レジオネラ属菌の繁殖の危険は開放型と同じである。
冷却塔の設置場所
- レジオネラ症や冷却水の水処理剤による汚染の危険があるので建物の外気取り入れ口から離して設置する。
- 風通しがよく、強風が当たらない場所。
- 屋上に設置する場合は給水圧力を確保するために高置水槽より3m(30kPa)は低くする。
開放型冷却塔の水管理
電気伝導度の変化を連続的に測定し、補給水量を調整する。濃縮管理方法が普及している。
電気伝導度の変化を測定ですから、たまにpHを測定など出ますのでだまされないように、電気伝導度です。
スライムやレジオネラ属菌の増殖を抑制するために、殺菌剤を添加する。
問題70
加湿装置の種類と加湿方式の組合せとして、最も不適当なものはどれか。
- 滴下式―――――気化方式
- 電極式―――――蒸気方式
- パン型―――――蒸気方式
- 遠心式―――――水噴霧式
- 超音波式――――気化方式
答え【5】
超音波式は水噴霧式に分類されます。超音波振動子により霧化する。不純物が放出するという欠点があります。
加湿装置の種類
蒸気吹き出し方式
- 無菌
- 不純物を放出しない
- 温度降下しない
名称 | 加湿原理 | 問題点 |
---|---|---|
電熱式 | シ―スヒ―タにより水を加熱 | |
電極式 | 電極間の水をジュ―ル熱で加熱 | 電極の寿命は5,000~8,000時間 |
赤外線式 | 赤外線の放射熱により水を加熱 | 赤外線ランプの寿命は約6,000時間 |
蒸気拡散管式 | ボイラからの蒸気を加熱蒸気として放出 | 蒸気配管・ドレン配管が必要 |
蒸気ノズル式 | ボイラからの蒸気を放出 | 蒸気配管・ドレン配管が必要 |
気化方式
- 温度降下する
- 不純物を放出しない
- 飽和湿度以下で放出する
- 湿度が高くなるほど加湿量が減少する
- 空気の汚れも影響する
名称 | 加湿原理 | 問題点 |
---|---|---|
エアワッシュ式 | 多量の水を空気と接触させて気化 | 多量の水を必要とする |
滴下式 | 上部へ給水し、加湿材をぬらして通風気化 | |
透湿膜式 | 透湿膜内へ給水し、透過した水分が通風気化 | |
回転式 | 加湿材を回転し、水槽でぬらして通風気化 | |
毛細管式 | 毛細管現象で加湿材をぬらして通風気化 | 加湿材への不純物の堆積が速い |
水噴霧方式
- 温度降下する
- 不純物を放出する
名称 | 加湿原理 | 問題点 |
---|---|---|
遠心式 | 遠心力により霧化 | 軸受の寿命は20,000~30,000 |
超音波式 | 超音波振動子により霧化 | 振動子の寿命は5,000~10,000時間 |
2流体スプレ―式 | 高速空気により霧化 | 圧縮機が必要 |
スプレ―ノズル式 | ノズルにより霧化 |