令和3年度空気環境の調整「過去問題解説4」
問題61
躯体蓄熱システムに関する次の文章の[ ]内に入る語句の組合せとして、最も適当なものはどれか。
躯体蓄熱システムにより蓄熱槽や熱源機器の容量が低減されるが、氷蓄熱に比べ、熱損失が[ ア ]、蓄熱投入熱量比が、[ イ ]。また、放熱時の熱量制御は[ ウ ]である。
- (ア)大きく――――(イ)大きく――――(ウ)容易
- (ア)小さく――――(イ)大きく――――(ウ)容易
- (ア)大きく――――(イ)小さく――――(ウ)容易
- (ア)小さく――――(イ)大きい――――(ウ)困難
- (ア)大きく――――(イ)小さく――――(ウ)困難
答え【5】
躯体蓄熱システムとは夜の間に、料金の安い深夜電力を利用し、ビルの躯体を温めたり冷やしておいて、昼間の冷暖房をまかなう新しい空調システムのことです。「躯体蓄熱」は、熱容量の大きな躯体(コンクリ―ト)に蓄冷・蓄熱を行い、建物自体を蓄熱媒体として利用する方法です。
躯体蓄熱システムにより蓄熱槽や熱源機器の容量が低減されるが、氷蓄熱に比べ、熱損失が[ 大きく ]、蓄熱投入熱量比が、[ 小さく ]。また、放熱時の熱量制御は[ 困難 ]である。 これは、躯体(コンクリ―ト)等を蓄冷・蓄熱するため熱損失は氷蓄熱より大きくなります。また、熱量制御も難しいといえます。問題62
空気調和における湿り空気線図上での操作に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 暖房時に水噴霧加湿を用いる場合、温水コイル出口の温度は設計給気温度より高くする必要がある。
- 冷房時の室内熱負荷における顕熱比SHF=0.8の場合、空調機からの吹出し空気の絶対湿度は室内空気より低くする必要がある。
- 温水コイル通過後の空気は単純加熱となり、通過前後で絶対湿度は変化しない。
- 還気と外気の混合状態は、湿り空気線図上において還気と外気の状態点を結んだ直線上に求められる。
- 冷水コイルによる冷却除湿では、コイル出口における空気の相対湿度は100%となる。
答え【5】
(5)は冷却減湿法の冷却コイル方式のことですが、冷却コイル方式は冷水コイルによる冷却除湿をすることにより部屋の湿度を下げる働きをします。従ってコイル出口における空気の相対湿度は100%になることはありません。
問題63
冷水コイルによる空気冷却に関する次の文章の[ ]内に入るものの組合せとして、最も適当なものはどれか。
湿り空気線図上で、冷水コイル入口空気の状態点をA、コイル出口空気の状態点をBとし、乾球温度がA点と等しく、かつ絶対湿度がB点と等しい状態点をCとする。
A点、B点、C点の比エンタルピ―をそれぞれhA、hB、hCとし、冷水コイルを通過する空気の質量流量をG[kg/h]とすると、冷水コイルによる除去熱量の潜熱分は[ ア ]、顕熱分は[ イ ]で表される。
- (ア)G(hA-hB)―――――(イ)G(hA-hC)
- (ア)G(hA-hC)―――――(イ)G(hA-hB)
- (ア)G(hA-hC)―――――(イ)G(hC-hB)
- (ア)G(hC-hB)―――――(イ)G(hA-hB)
- (ア)G(hC-hB)―――――(イ)G(hA-hC)
答え【3】
上記図は空気冷却器による冷却操作の湿り空気線図上で表している。この場合、冷却および冷却除湿に必要な除去熱量qcは、空気Aと空気Bの比エンタルピ―差を用いて、次式により求めることができる。さらに、冷却除湿の場合に顕熱qcsと潜熱qcLを分けて 求めたい場合は、以下による。
- 除湿熱量「kJ/h]qc=G(hA-hB)
- 除去熱量(顕熱分)「kJ/h]qcs=G(hC-hB)
- 除去熱量(潜熱分)「kJ/h]qcL=G(hA-hC)
問題64
空気調和方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 定風量単一ダクト方式は、給気量が一定であり、給気温度を可変することにより熱負荷の変動に対応する方式である。
- 変風量単一ダクト方式は、定風量単一ダクト方式と比較して空気質確保に有利である。
- ダクト併用ファンコイルユニット方式は、単一ダクト方式とファンコイルユニットを併用することにより、個別制御性を高めたシステムである。
- 放射冷暖房は、冷房時の表面結露や空気質確保に配慮が必要である。
- マルチゾ―ン空調方式は、負荷変動特性の異なる複数のゾ―ンの温湿度調整を1台の空調機で行う方式である。
答え【2】
空気質確保に有利なのは定風量単一ダクト方式です。定風量単一ダクト方式は、常時一定の給気風量が保たれることから、必要な新船外気量が確保されやすく、清浄度を含んだ室内空気質の維持には有利なシステムと言える。
中央方式空気調和設備
定風量単一ダクト方式
最も基本的な空調方式ゾ―ニングされた各単位ごとに空調機設置して空調された空気を1本のダクトで供給。
- 各室に一定風量をダクトで供給し、熱負荷の変化に対応して、給気温度を変化させる方式。
- 代表点又は還気の温湿度で制御するので、単独の大空間に適した方式。
- 複数室で個々の温湿度制御はできない。
- 再熱器を持ったタ―ミナルレヒ―ト方式にすれば個々の制御が可能となるが省エネではない。
- 冬季インテリア部の小室は吹き出し温度に近い温度になる。
変風量単一ダクト方式
- 空調機からは一定の温度で送風される。各室の負荷量に応じて送風量を変化させて個別制御を行う。
- 絞り式のVAVを用いた場合は搬送動力を節約できるので省エネ的である。またすべての部屋あるいはゾ―ンの熱負荷のピ―クは同時に発生しないため、単一ダクト定風量方式の場合と 異なり風量は吹き出し口個々の吹き出し風量を合計した総量よりも小さく設定できる。
- 全閉型VAVユニットを使用することによって、不使用室に対する空調を停止することができる。
- 軽負荷時小風量になって、換気量や外気量の不足が生じ室内の空気清浄度が低下する。
二重ダクト方式
中央の空調機で冷風と温風をつくり,それぞれ2本のダクトで各ゾ―ンまで送風し、各室に吹き出す前に混合ユニットで負荷に応じた温度に混合して吹き出す。
個別制御に優れる。
換気量を確保できるなどの優れた点もあるが、冷暖の混合によるエネルギ―ロスが発生し省エネ的ではない
また、ダクトスペ―スが大きくなり、設備費、運転費とも高くなるなどの欠点がある。
ダクト併用ファンコイルユニット方式
インテリア部分を定風量単一ダクト方式、熱負荷の多い各室ペリメ―タ部分にファンコイルユニットを配置する組み合わせ方式。
この方式は熱負荷の多い外周部分を水(ファンコイルで)処理するため、負荷変動の少ない内部負荷相当の空調機、ダクトでよく、省スペ―スに優れる。
配管を四管式(冷水・温水)にすることにより冷暖房を行うことが可能で個別制御性に優れる。
ペリメ―タゾ―ンとインテリアゾ―ンの間で混合損失が発生し、対策が必要となるケ―スがある。
床吹き出し方式
OA用の二重床を、空調に利用したシステム、二重床内に温湿度調整と除塵処理をした空調空気を、床面に設けられた吹き出し口から室内に向かって上向きに吹き出し気流を 発生させ室内空気を誘因混合しながら、床上1.8m以内などの居住域空調を実現する方式。
この方式の特徴はダクトを用いないので空調ファンの静圧が小さくてよく搬送 動力を削減できる。冷房の吹き出し温度は、居住域に直接吹出すので天井吹き出しよりも3℃ほど高く19℃程度。 基本的赤字は暗記。吹き出し温度も19℃程度と覚える。
放射冷暖房方式
- 冬期冷暖房として従来から利用されてきた方式。
- 配管を床・壁・天井に埋設し冷温水を通す方式が一般的。
- この方式は室内空気の換気は行えないので、必然的に他の空調方式と併用となる。
問題65
冷凍機に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- スクロ―ル圧縮機は、渦巻き状の固定スクロ―ルと渦巻き状の旋回スクロ―ルの旋回により冷媒を圧縮する。
- スクリュ―圧縮機を用いた冷凍機は、スクロ―ル圧縮機を用いたものより、冷凍容量が大きい。
- 吸収冷凍機は、都市ガスを使用するので、特別な運転資格が必要である。
- 遠心圧縮機は、容積式圧縮機と比較して、吸込み、圧縮できるガス量が大きい。
- シリカゲルやゼオライト等の固体の吸着剤を使用した吸着冷凍機は、高い成績係数を得ることができない。
答え【3】
吸収式冷凍機は電力量が少なくて冷却塔は大きくなり、また真空で運転するので高圧保安法の適用を受けないので運転資格がいらない。蒸気圧縮機冷凍機と比較した場合の吸収式冷凍機の特徴
- 使用電力量が少ない。
- 成績係数が低く、排熱量が大きいので、冷却塔は大型となる。
- 真空で運転され、高圧ガス保安法の適用を受けない。
- 負荷変動に対し、容量制御性に優れている。
- 振動や騒音が少ない
- 特別な運転資格が必要としない。
- 高圧再生器と低圧再生器の2つの再生器をもつ二重効用吸収冷凍機は、単効用吸収冷凍機よりもエネルギ―効率に優れる。
- 排熱回収に適している。