令和3年度建築物の環境衛生「過去問題解説5」
問題41
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)における感染症の類型に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 一類感染症では、交通が制限されることがある。
- 二類感染症では、建物の立ち入りは制限されない。
- 三類感染症では、就業制限される職種がある。
- 四類感染症では、積極的疫学調査は実施されない。
- 五類感染症には、ジアルジア症が含まれる。
答え【4】
(4)が不適当です。一類から五類感染症全て積極的疫学調査は実施されています。
一類感染症 | 二類感染症 | 三類感染症 | 四類感染症 | 五類感染症 | |
---|---|---|---|---|---|
疾病名の規定方法 | 法律 | 法律 | 法律 | 政令 | 省令 |
擬似症患者への適用 | 〇 | 〇 | X | X | X |
無症状病原体保有者への適用 | 〇 | X | X | X | X |
積極的疫学調査の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
医師の届出 | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(直ぐに) | 〇(一部を除き7日以内)) |
獣医師の届出 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
健康診断の 受診の勧告・実施 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
就業制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
入院の勧告・措置・移送 | 〇 | 〇 | X | X | X |
汚染された場所の消毒 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
ねずみ・昆虫等の駆除 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
汚染された物件の排気等 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
死体の移動制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
生活用水の使用制限 | 〇 | 〇 | 〇 | X | X |
建築物の立入制限・封鎖 | 〇 | X | X | X | X |
交通の制限 | 〇 | X | X | X | X |
動物の輸入禁止・輸入検疫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X |
問題42
次の感染症のうち、主に空気を介して感染するものはどれか。
- デング熱
- B型肝炎
- ペスト
- 日本脳炎
- 麻しん
答え【5】
(5)の麻しんのみ空気感染です。
- デング熱はネッタイシマカ、ヒトスジシマカによって媒介される感染症です。
- B型肝炎は主に血液を介して感染する。成人では性交渉や輸血,注射針などを通して感染します。
- ペストはネズミやのみによって媒介される感染症です。
- 日本脳炎はガタアカイエカによって媒介される感染症です。
問題43
クリプトスポリジウム症に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 病原体は細菌である。
- ヒトや哺乳動物の消化管で増殖する。
- 水道水の塩素消毒で死滅する。
- 水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針では、レベル1が最もリスクが高い。
- 下痢症状は1~2日で消失する。
答え【2】
正しいのは(2)でクリプトスポリジウム症は人間や哺乳動物(ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)の消化管内で増殖し、感染症をもたらす。- 病原体は原虫である。
- 塩素に抵抗をもつ原虫であるクリプトスポリジウムによる感染症が水道を介して発生するため水道水の塩素消毒で死滅しない。
- 水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針では、レベル4が最もリスクが高い。(レベル4→レベル3→レベル2→レベル1の順に低くなっている。)
- 発症は急性で、おびただしい水様の下痢、腹部けいれんを起こす。症状は一般的に1~2週間続き、その後軽減する。
クリプトスポリジウム症の特徴は以下の通りです。
- 病原体は原虫である。
- 病原体を含む水を経口摂取して発症する。
- 潜伏期間は1週間である。
- 芽胞と呼ばれる殻により、塩素に抵抗を示し、水の塩素消毒は病原体に対して有効ではない。
- 病原体による水の汚染を判断上で、大腸菌などの指標菌の検査は有用である。
- 水道を介して発生する消化器感染症である。
- 症状は一般的に1~2週間続きその後軽減する。
問題44
5%溶液として市販されている次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈して100mg/Lの濃度の溶液を10L作る場合、必要となる5%溶液の量として、最も近いものは次のうちどれか。
- 0.2mL
- 4mL
- 20mL
- 40mL
- 200mL
答え【3】
ここで、少し問題を解く際のポイントを記載いたします。まず、水溶液の濃度の表し方には2種類あります。 濃度を%と表す場合と体積で表す方法です。
- (溶質の質量[g] / (水溶液の質量[g]) x 100 = 水溶液の濃度[%]
- (溶質の質量[mg] / (水溶液の体積[L] = 水溶液の濃度[mg/L]
まず、100mg/Lの濃度の溶液を10L作る場合なので
実際に必要な次亜塩素酸ナトリウムは
100mg/L x 10L = 1000mg
になります。
そこで単位が
mg/L x LなのでLが約分されてmgが残り
1000mgになります。
1000mg = 1mLとみなしてよく
この1mLが全体の5%を占めてるので、全体は1mL ÷0.05 = 20mLになります。
問題45
減菌に用いられるものとして、、最も不適当なものはどれか。
- γ線
- ろ過
- エチレンオキサイドガス
- 高圧蒸気
- 紫外線
答え【5】
ある環境中の全ての微生物を死滅させることを減菌、そのなかの病原体のみを死滅させることを消毒と言います。その中で紫外線は消毒に用いられるものです。