令和3年度建築物の環境衛生「過去問題解説4」
問題36
情報機器作業に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 作業者の健康に関する調査で、最も多い自覚症状は眼の症状である。
- ディスプレイのグレア防止には、直接照明を用いる。
- 書類上及びキ―ボ―ド上における照度は300lx以上が推奨される。
- ディスプレイ画面上における照度は500lx以下が推奨される。
- ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキ―ボ―ド面における明るさと、周囲の明るさとの差は、なるべく小さくする。
答え【2】
この問題は令和3年12月1日法改正されています。
ここがポイントを参照ください。
グレアとは、良好な見え方を阻害するもので,不快感や物の見えづらさを生じさせるような「まぶしさ」のことをいいます。
ディスプレイのグレア防止には、間接照明等のグレア防止照明器具を用いる。情報機器作業(VDT作業)
「VDT作業」の用語の使用をやめ、「情報機器作業」と呼ぶことになっております。
従って2019年以降の問題ではVDT作業での出題になっています。
2020年以降から情報機器作業での出題になっています。
情報機器作業(VDT作業)に関する問題は以下のような問題がでるので覚えよう。
- 室内は、できるだけ明暗の対象が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
- ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキ―ボ―ド面における明るさと周辺との明るさの差はなるべく小さくすること。
- ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカ―テン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。
- グレアを防止するためには、視野内の輝度はほぼ同じレベル(最大でも1:10程度)にする。
- エアコンからの風が当たる場所では、ドライアイを引き起こす可能性がある。
- グレアの防止には反射型ディスプレイを用いること。
- グレアの防止には間接照明等のグレア防止照明器具を用いること。
- グレアの防止にはディスプレイの画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整すること。
高齢者と情報機器作業(VDT作業)
高齢者の情報機器作業(VDT作業)については、高齢者は若者に比べて目の疲れの回復に時間がかかるうえ遠近両用メガネ等を使用すると、画面及びキ―ボ―ドが見難くなって眼疲労につながること等に、注意が必要です。
備考:グレアとは照明の非常に高い輝度や、周囲と強すぎる輝度の違いがあると、まぶしさや不快感を感じ、物が見えにくくなる現象。
「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」(改正)
情報機器作業(VDT作業)の一部改正が2021年12月1日に行われました。
改正前
ディスプレイを用いる場合のデ ィスプレイ画面上における照度は 500 ルクス以下、書類上及びキーボ ード上における照度は 300 ルクス 以上を目安とし、作業しやすい照 度とすること。 また、ディスプレイ画面の明る さ、書類及びキーボード面におけ る明るさと周辺の明るさの差はな るべく小さくすること。
改正後
ディスプレイを用いる場合の書 類上及びキーボード上における照 度は 300 ルクス以上とし、作業し やすい照度とすること。また、ディスプレイ画面の明る さ、書類及びキーボード面におけ る明るさと周辺の明るさの差はな るべく小さくすること。
つまり
ディスプレイを用いる場合のデ
ィスプレイ画面上における照度は
500 ルクス以下
がなくなり
書類上及びキーボ
ード上における照度は 300 ルクス
以上を目安としての目安の部分も削除されています。
高齢者とVDT作業
高齢者のVDT作業については、高齢者は若者に比べて目の疲れの回復に時間がかかるうえ遠近両用メガネ等を使用すると、画面及びキ―ボ―ドが見難くなって眼疲労につながること等に、注意が必要です。
問題37
電磁波に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- レ―ザ―光線による可視光のレ―ザ―の他、赤外線や紫外線のレ―ザ―がある。
- 溶接作業で発生する電気性眼炎は紫外線による。
- 赤外線は白内障の原因となる。
- マイクロ波の主な用途の一つとして、家庭用電子レンジがある。
- 可視光線の波長は赤外線より長い。
答え【5】
(5)は赤外線の波長は可視光線より長い。波長は
- X腺・・・・・1pm~10nm
- 紫外線・・・・10nm~380nm
- 可視光線・・・380nm~780nm
- 赤外線・・・・780nm~1mm
電磁波の種類
電磁波は波長の長短によってその性質は著しく変化する。
大きく分けるとX線やガンマ線等の電離作用を持つ高エネルギ―の電離放射線と商用周波電磁波をはじめ、電波、可視光線、赤外線、紫外線等の電離作用をもたない非電離放射線です。
紫外線
紫外線への曝露は、殺菌・ア―ク溶接・屋外作業・炉前作業・検査作業で起こる。紫外線は波長からUV-A、UV-B、UV-Cに分類される。
紫外線の生態影響- ビタミンD生成
- 皮膚黒色腫
- 皮膚紅斑
- 皮膚がん
- 白内障
- クル病予防
- 無精子病
- 白血病
- 電気性眼炎
赤外線
熱線とも呼ばれる。可視光線より長い波長で、マイクロ波より短い波長の電磁波です。
- 近赤外線・・・・770nm~1400nm
- 遠赤外線・・・・1400nm以上
- 炉前作業
- 赤外線乾燥作業
- 溶接作業
- 硝子加工作業
- 熱中症
- 白内障
- 網膜損傷
- 代謝促進
- 皮膚血管拡張
問題38
電離放射線による健康影響のうち、確定的影響かつ晩発影響として最も適当なものは次のうちどれか。
- 不妊
- 染色体異常
- 白血病
- 白内障
- 甲状腺がん
答え【4】
(4)の白内障が確定的影響かつ晩発影響です。皮膚紅斑、白血球減少、脱毛、不妊、白内障等は、かなりの放射線に被曝しないと発症しない。この放射線の量を閾値と呼び、この閾値のある放射線影響のことを確定的影響という。
一方、癌や遺伝子・染色体異常や胎児奇形等の発生に関しては、閾値がなく、どんなに少ない線量でも影響が発生する確率が存在するため、確率的影響と呼ばれる。
問題39
ヒトと水に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 通常の状態で、水が最も多く排泄されるのは尿であり、その次は皮膚からの蒸泄である。
- 成人の体内の水分量は、体重の約80%である。
- 水分欠乏が体重の5%以上で、喉の渇きを感じる。
- ヒトが生理的に必要とする水分量は、成人の場合、1日当たり約3リットルである。
- 体内では細胞内液より細胞外液の方が多い。
答え【1】
正しいのは(1)です。- 成人の体内の水分量は、体重の約50~70%である。
- 水分欠乏が体重の1%以上で、喉の渇きを感じる。
- ヒトが生理的に必要とする水分量は、成人の場合、1日当たり約1.5リットルである。
- 体内では細胞外液より細胞内液の方が多い。
水と健康
- 血液成分の多くは水分である。
- 身体の中の水分である体液は体重の50~70%(体重50kgの人の水分はおよそ30kg前後)
- 幼若であるほど体内の水分の割合は高く、一般に女性の方が体内の水分量は少ない。加齢とともに、体内の水分量は少なくなる。
- 人が必要とする水分の量は普通1日約1.5Lで、体重当たりに換算すると小児は成人の3~4倍の水分量が必要
- 通常の食事及び水分摂取の状態で、成人が1日に排泄する尿の量は1~2Lである。
- 体内で生成された老廃物の排泄のため、成人では1日に最低0.4~0.5Lの尿が必要である。
- 体内における食物の代謝過程で生成される水は通常成人で1日約0.3Lである。
体液は細胞の内部に含まれる細胞内液と、細胞の外に存在する細胞外液とに分けられる。
細胞内液は全体液の約3分の2を占め、細胞外液は約3分の1を占める。細胞外液の代表的なものは血液(血漿(けっしょう))であるが、そのほかに間質液、リンパ液などがある。細胞内液の組成はカリウムイオンが多く、細胞外液にはナトリウムイオンおよび塩素イオンが多い。
水分の欠乏率と脱水症状
水分欠乏率「%」 | 脱水症状 |
---|---|
1 | のどの渇き |
2 | 強い渇き、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮 |
4 | 動きのにぶり、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労及び嗜眠、感情鈍麻、吐気、感情の不安定 |
6 | 手、足の震え、熱性抑うつ症昏迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍、呼吸数の増加 |
8 | 呼吸困難、めまい、チアノ―ゼ、言語不明瞭、疲労増加、精神錯乱 |
10~12 | 筋けいれん、平衡機能失調、失神、舌の腫張、講妄および興奮状態、循環不全、血液濃縮及び血液の減少、腎機能不全 |
15~17 | 皮膚がしなびれてくる。飲込み困難、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化舌がしびれる、 |
18 | 皮膚のひび割れ、尿生成停止 |
20%以上 | 死亡 |
問題40
水質汚濁に係る環境基準項目に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- ヒ素は、急性ばく露により皮膚の色素沈着を起こす。
- 亜鉛は、水俣病の原因となる。
- カドミウムは、水質汚濁に関する環境基準において検出されないこととなっている。
- アルキル水銀は、生物学的濃縮を起こす。
- ベンゼンは、ヒトに対する発がん性は認められない。
答え【4】
正しいのは(4)です。アルキル水銀は、有機水銀の一つでこのなかに含まれているメチル,エチル水銀は人間の神経をおかし,「水俣病」の原因物質とされています。
アルキル水銀による中毒症状は,知覚,聴力,言語障害,視野の狭窄,手足のまひなどの中枢神経障害を起こし死亡する場合もあります。
アルキル水銀は無機水銀に比べて生物による濃縮率が高く、汚染地区では魚介類に高濃度に蓄積されているといわれています。環境基準は、「検出されないこと」と定めています。
- ヒ素は、慢性曝露により皮膚の色素沈着を起こす。
- 有機水銀は、水俣病の原因となる。
- カドミウムは、水質汚濁に関する環境基準において0.03mg/L以下であること。
- ベンゼンは、ヒトに対する発がん性は認められています。