建築物の環境衛生8
水と健康
- 血液成分の多くは水分である。
- 身体の中の水分である体液は体重の50~70%(体重50kgの人の水分はおよそ30kg前後)
- 幼若であるほど体内の水分の割合は高く、一般に女性の方が体内の水分量は少ない。加齢とともに、体内の水分量は少なくなる。
- 人が必要とする水分の量は普通1日約1.5Lで、体重当たりに換算すると小児は成人の3~4倍の水分量が必要
- 通常の食事及び水分摂取の状態で、成人が1日に排泄する尿の量は1~2Lである。
- 体内で生成された老廃物の排泄のため、成人では1日に最低0.4~0.5Lの尿が必要である。
- 体内における食物の代謝過程で生成される水は通常成人で1日約0.3Lである。
体液は細胞の内部に含まれる細胞内液と、細胞の外に存在する細胞外液とに分けられる。
細胞内液は全体液の約3分の2(約40%)を占め、細胞外液は約3分の1(約20%)を占める。細胞外液の代表的なものは血液(血漿(けっしょう))であるが、そのほかに間質液、リンパ液などがある。細胞内液の組成はカリウムイオンが多く、細胞外液にはナトリウムイオンおよび塩素イオンが多い。
血液成分の多くは水分である。血液は体内に摂取・吸収された栄養素や酸素、そしてタンパク質、ホルモン、酵素、抗体、血液凝固因子等を含み、血液循環によってそれらを身体の各部位に運搬する。
血液成分の40~50%は赤血球、白血球及び血小板等の有形成分であり、残りの55~60%は血漿(しょう)の液体成分であり、液体成分の90%は水分である。有形成分の中では酸素を運搬する赤血球が大部分を占め、白血球や血小板は数%である。
水分の欠乏率と脱水症状
水分欠乏率「%」 | 脱水症状 |
---|---|
1 | のどの渇き |
2 | 強い渇き、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮 |
4 | 動きのにぶり、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労及び嗜眠、感情鈍麻、吐気、感情の不安定 |
6 | 手、足の震え、熱性抑うつ症昏迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍、呼吸数の増加 |
8 | 呼吸困難、めまい、チアノ―ゼ、言語不明瞭、疲労増加、精神錯乱 |
10~12 | 筋けいれん、平衡機能失調、失神、舌の腫張、講妄および興奮状態、循環不全、血液濃縮及び血液の減少、腎機能不全 |
15~17 | 皮膚がしなびれてくる。飲込み困難、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化舌がしびれる、 |
18 | 皮膚のひび割れ、尿生成停止 |
20%以上 | 死亡 |
尿生成停止は死亡する直前の18%だから頭の片隅に覚えて置いてください
冷房障害対策
- 風速(気流)の速さを抑える
- 男性より女性に多い
- 女性は足元が冷えないようにする
- 長時間冷やさないようにする
- 女性の快適温度は男性よりも1~2℃高い
すべて、丸暗記
冬期の暖房時の留意事項
冷房時に比べ暖房時の室温による身体障害の訴えは少ない。暖房病という症例は少ない。
しかしながら、暖房時の室温にもいくつかの注意が必要である。- 冷たい壁・窓による放射温度差を10℃以内とする。
- 暖かい天井に対しては放射温度差を5℃以内とする。
- 足部の気温を頭部よりも3℃以上低くしない。
- 気流は0.15m/s以下に保つ。
- ウォ―ムビズの導入によりCO2排出量を削減できる。
- 低湿度では、呼吸器疾患に罹患しやすい。
- 加湿を行う場合、噴霧式の加湿器では水に混入した不純物が空気中にエアロゾルとなって放出されるので、その水質は少なくとも水道法の水質基準に適合したものでなければならない。
感染症と対策
目的この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の 発生を防止し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
感染症と病原体の種類
分類 | 大きさと形態 | 感染症の例 |
---|---|---|
ウイルス | 10~400nm球状の小体 | 麻しん、痘そう、インフルエンザ、日本脳炎、ポリオ、B型肝炎 |
細菌 | 1μm前後球形ないし櫛形の単細胞生物 | コレラ、赤痢、腸チフス、ベスト、結核、レジオネラ症、パラチフス |
リケッチア | 300~500nm球球ないしは裸形の小体 | 発疹チフス、つつが虫病 |
真菌 | 1~10μm程度の仲間 | カンジダ症、白癬症 |
スピロヘ―タ | 6~15μmらせん形の細長い単細胞生物 | 梅毒、ワイル病 |
原虫 | 20~500μm以上単細胞生物 | マラリア、クリプトポリジウム症 |
- μm・・・・・・・・10-6mであり1000nmである。
- nm・・・・・・・・・10-9mであり10-3μmである。
nm < μm < mm であり、大きさ的には
ウイルス < リケッチア < 細菌 < 真菌 < スピロヘ―タ < 原虫
の順になることが分かる。
備考
- ウイルスは生体内でしか増殖できない。
- 細菌や真菌は結露した壁の表面で増殖する。
一類感染症
感染症には1類から5類までありその中で一番感染力が強く危険な感染症この1類感染症です。
ビル管理士試験では特に一類感染症の問題が多いのでこの1類感染症は丸暗記しておきましょう。- ベスト
- エボラ出血熱
- 痘そう
- マ―ルブルグ熱
- クリミア・コンゴ出血熱
- ラッサ熱
- 南米出血熱
備考:一類感染症は知事による入院勧告
空気媒介感染症
結核
- 結核菌が咳、会話による飛沫核感染症により感染する。
- 感染しても多くの人は発症しない。
- 我が国で結核が制圧されたとはいえない。
- 汚染した再循環空気による建築物での集団感染事例の報告や、建築物の気密性の向上と集団感染の増加の関連を示唆する報告もある。
レジオネラ属菌
レジオネラ属菌は土壌や地下水などの自然界に広く存在している。
一般に20~50℃で繁殖し、人の体温に近い36℃前後で最も良く繁殖するが、熱に弱く、55℃ 以上で死滅する。 ポイント・・・・55℃で死滅するので給湯温度を55℃以上確保する必要があるわけ、上記レジオネラ属菌も丸暗記すること。 レジオネラ症は間接伝播(空気感染)する感染症である。(4類感染症に指定されている。)感染源
レジオネラ属菌の感染減は主に給水、給湯設備、冷却塔、循環式浴槽、加湿器、蓄熱槽など感染経路
エアロゾルや汚染水の吸引、径口感染などレジオネラ防止対策
- 外部からのレジオネラ菌の侵入を防ぐ
- 水温を20℃以下に保つ
- 給水機器の配管類のごみ、垢を防ぐ
- 残留塩素の確保
- 定期的に点検と清掃
- 給湯の末端温度55℃以上を確保
- 貯水槽の滞留時間を短くする
- エアロゾルを発生させる機器は使わない
- 殺菌剤や防食剤の注入
なんとなくわかりそうな感じがするのでこの手の問題は必ずゲットしたい。 レジオネラは55℃以上で死滅するので給湯温度を55℃以上に保つこと←これ重要です。
水系感染症
感染症のうち、飲料水の水に何らかの原因で病原体が入り込み、水中で死滅しないで給水末端まで送られ、経口摂取されて消化管に感染した場合を水系感染症と呼ぶ。
- 水系感染症の代表的なもの
細菌 腸チフス、バラチフス、コレラ、赤痢等 ウイルス A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス等 原虫 アメ―バ赤痢、クリプトスポリジウム等 - 水系感染症の特徴
- 患者の発生が給水範囲と重なる。
- 発生時期は季節に左右されることは少ない。
- 初発患者の発生から数日で爆発的に発生する。
- 一般に水で薄められるため、潜伏期間が長く、致死率は低い、軽傷例が多い。
- 患者の性別、職業、年齢等に無関係に発症する。
ノロウイルス
ノロウイルスの特徴は以下の通りです。
重要ですのでそのまま覚えましょう。
- 食中毒の原因となる。
- 感染力が強い。
- 感染しても発症しない場合がある。
- ヒトからヒトへ感染する。
- 潜伏期間は24~48時間である。
- 冬季を中心に発生する。
- 主な症状は、嘔吐、下痢、発熱である。
クリプトスポリジウム症
クリプトスポリジウム症の特徴は以下の通りです。
重要ですのでそのまま覚えましょう。
- 病原体は原虫である。
- 病原体を含む水を経口摂取して発症する。
- 潜伏期間は約1週間で、発症は急性で、おびただしい水様の下痢、腹部けいれんを起こす。
- 芽胞と呼ばれる殻により、塩素に抵抗を示し、水の塩素消毒は病原体に対して有効ではない。
- 病原体による水の汚染を判断上で、大腸菌などの指標菌の検査は有用である。
- 消化器感染症である。
- 症状は一般的に1~2週間続きその後軽減する。
- クリプトスポリジウムは人間や哺乳動物(ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)の消化管内で増殖し、感染症をもたらす。
- 塩素に抵抗性をもつ原虫であるクリプトスポリジウムによる感染症が水道を介して発生する。
再興感染症
再興感染症とはその発症が一時期は減少していたが、再び注目されるようになった感染症に対する総称である。
抗生物質などの発達により一時期は制圧できたものの、何らかの原因で再度公衆衛生上問題となった疾患を指す。
主な再興感染症
- ウイルス:インフルエンザ、麻疹、デング熱、黄熱、日本脳炎、狂犬病など
- 細菌:サルモネラ感染症、腸チフス、赤痢、コレラ、黄色ブドウ球菌感染症、化膿レンサ球菌感染症、結核、ジフテリア、梅毒、ペストなど
- 寄生虫:マラリア、アメーバ赤痢、エキノコックス症など
インフルエンザ
- インフルエンザウイルスによりもたらされる感染症である。
- 症状としては、比較的急速に始まる高熱(38~40℃)や頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの全身症状と、喉の痛み、咳や痰などの呼吸器の急性炎症症状などである。
- 潜伏期間が短く、感染力が強いことも特徴で、毎年、冬期に多数の患者が発生している。
- アルコールにより感染対策が可能なため、冬期にはアルコール手指消毒薬を建物に設置して手洗いを促すという対応もある。
- インフルエンサは通常の風邪と比べ、症状が重く、高齢者がかかると肺炎を併発することもあり、最悪の場合は死に至ることもある。
新型コロナウイルス感染症
- 主に、飛沫を介した感染が、いわゆる3密(密集、密閉、会話をするような密接)での感染がある。
- 感染対策としては、マスクの装着、換気の確保、距離の確保が挙げられる。
- 変異株などが出現し、そのたびに感染力が高まっている。
感染成立の3要素
感染とは、微生物が体内に侵入し、体内で定着・増殖し、寄生している状態である。
また、感染により、何らかの症状が現れることを発病(発症)という。
- 感染源
- 感染経路
- 免疫が無い(宿主の感受性)
感染予防には三つが同時にそろわないようにそれぞれ対策を行う。
予防対策
感染源の対策 | 病原巣をなくす、患者の隔離、保菌者の管理、治療、病原体に汚染された器具、機械類の消毒 |
感染経路への対策 | 水や空気の浄化、消毒の実施、ねずみ・害虫の駆除、食品の衛生管理、マスクの着用、うがいをする等 |
感受性への対策 | 予防接種は感受性をなくす有効な手段 体力、抵抗力の向上 |
感染源対策・・・・患者の隔離、保菌者の管理
これ覚えておこう。
この感染源対策、感染経路対策、感受性対策も良く考えたらわかりやすい問題だと思います。
たとえば、感染源の対策は患者の隔離とか治療とかもう既に感染した人への対策であり、感受性対策では、予防接種など感染しないための対策です。
建築物において考慮すべき感染経路は、接触感染、飛沫感染、空気感染、エアロゾル感染、そして水を介する感染、昆虫や動物を介する感染が挙げられる。