ゴキブリの生態と防除
ゴキブリの種類
主な種類にチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、トビイロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、キョウトゴキブリなどがある。
チャバネゴキブリ
- 全世界に広く分布する都市環境の代表的な害虫。
- 日本においても最優占種である。
- 飲食店・病院等に多く生息する。
- 最も小型で成虫の体長は1.5cm程度。
- 全体は黄褐色で前胸背板に明瞭な2本の細長い黒斑がある。
- 1卵鞘中には30~40個の卵が入っている。
- 孵化直前まで尾端に卵鞘を保持している。
- 成虫になるまでの期間は25℃で約60日、27℃で45日、20℃で220日と著しく長くなる。
- 1匹のメスは平均5回産卵する。
- チャバネゴキブリは日本の冬季では暖房なしでは越冬できないが暖房設備の完備されたビルでは通年生息することができる。
- 1年に2回~3回世代交代を繰り返す。
クロゴキブリ
- 成虫の体長は3~4cm。
- 本州(関東以西)、四国、九州に多い。
- 一般住宅の優占種。
- ビル内では厨房、湯沸し器、建築物周辺や下水道、側溝等でも見られる。
- 気温の高い夏に雄雌が1対で飛行行動し分布を拡大する。
- やや褐色がかかった艶のある黒色で斑紋はない。
ヤマトゴキブリ
- 屋外でも暮らす半野生種
- クロゴキブリに形態は似ているが、艶が少なくやや小型で平たい感じを受ける。
- 農村地区や郊外の木造住宅に多いが、都心の下水道や飲食店で生息が確認されている。
ワモンゴキブリ
- 成虫の体長は3~4.5cmの大型種。
- もともと熱帯性で九州以南に多かったが近年では暖房完備されたビル各地に定着している。
- やや赤みを帯びた黄褐色で前胸背板に黄白色の輪紋がある。
トビイロゴキブリ
ワモンゴキブリの近似種で、年間高温化したビル各地で定着している。
キョウトゴキブリ
クロゴキブリに似ているが大きさはチャバネゴキブリ程度で食品工場などに定着している。
ゴキブリの習性
- 夜間特定の時間に潜伏場所から出現し、摂食、摂水行動を起こす。
- 体内に組み込まれた体内時計により、約24時間を周期とする行動が見られる。
- 潜伏場所の辺りに糞などの汚れが多く見られ、殺虫剤を処理する場所の目安になる。
- 集合フェロモンを糞中に分泌してこれによって群れる。
- 雑食性で、食品類、汚物など様々なものを餌とする。ゴキブリ類の食性は、発育段階で変化する。
- 物の縁や隅を通る傾向があり、壁から5cm程度の隅に活動が集中する。
防除法
薬剤処理とともに餌となるものは放置しない。生息場所をなくすことが重要である。
残留処理
ゴキブリの行動習性を利用した基本駆除法、残効性の高い有機りん剤やピレスロイド剤を壁面等1m2当たり50mL散布するのが標準である。
ゴキブリの通路や隠れ場所となりやすい家具の隅や隙間などに重点的に殺虫剤処理を行う。
直接処理
生息密度が高い場合は煙霧、燻煙処理、蒸散、ULV処理などによって室内に薬剤を充満させ30分~1時間部屋を閉めきり、隅に澄んでいるゴキブリを 直接殺す。 残効性には期待できない。 部屋はできるだけ密閉状態にし、引き出し、戸棚等はすべて開放しておく。
煙霧処理
ジクロボス0.3%油剤を1m3当たり2~3mL散布する。
追い出し効果(フラッシング効果)
ピレスロイド剤にはゴキブリに対する追い出し効果がある。
空間処理にピレスロイド剤を使用すると、フラッシング(追い出し)効果が期待できる。
ULV処理
ペルメトリンを有効成分とする専用水性乳剤では1m3当たり5%溶液を約1mL処理する。
粘着トラップ
生息密度がそれほど高くない場合に用いる。薬剤処理と併用する。
毒餌(ペイト剤)処理)
- 喫食性を増すためにロ―チスポット(ゴキブリの排泄物等による汚れ))が多く見られる,ゴキブリが良く行動する場所に、的確に数か所設置する。
- 喫食率を高めるため、ゴキブリの餌となるものを設置場所周辺から除去することが大切である。
- 毒餌に殺虫剤がかからないようにする。
- 遅効性の為生息密度が減少するまである程度長時間に配置が必要である。
総合的な防除
- 駆除率の算出には、1日、1トラップ当たりのゴキブリ捕獲数であるゴキブリ指数を用いる。
- 環境の整備、清掃に努めることで発生を最小限に抑え、発生調査に基づき、状況に合った防除対策を講じる。
- 殺虫剤を用いた防除と、殺虫剤に頼らない防除とを組み合わせた方法である。
- 薬剤使用にあたっては環境に配慮し、少ない薬量で、労力、経済負担を少なくする。
- 発育期間が長いため、ハエや蚊と比較して徹底駆除後における生息密度の回復にかかる時間も長い。
ダニ
ダニは分類学的にはくもに近く昆虫ではない。
日本国内で知られる3000種のダニのうち屋内に居て、さらに吸血する種はごくわずかのダニである。
ダニの生態
- 成虫で4対の脚をもち、羽根や触覚はない。
- ダニの体は、口器がある顎体部と、頭、胸、腹が融合した胴体部の2つに分かれている。
- 幼虫では脚は3対、若虫、成虫で4対である。
ダニの種類
- 吸血性ダニ
- イエダニ、マダニ
- 動物寄生性ダニ
- イエダニ(ネズミに寄生)、スズメサシダニ(スズメに寄生)、トリサシダニ(鳥に寄生)
- 屋内塵性ダニ
- ヒョウヒダニ、コナダニ、ツメダニ
- 人刺咬性のダニ
- ツメダニ
- 人寄生性のダニ
- ヒゼンダニ
- 植物由来のダニ
- ヒメハダニ
ヒョウヒダニ
- 人のふけを食べる。
- 人は刺さない
- 温度25℃で湿度60%以上の湿気があるところで繁殖しやすい。
- 死骸や糞が気管支喘息の原因になる。
イエダニ
- ネズミの巣が発生源でネズミに寄生する。
- 宿主であるネズミがいなくなると人からも吸血することがある。
- 防除対策にはネズミの巣を除去するのが有効である。
ケナガコナダニ
- 新しい畳によく発生する。
- 保存食品からも発生する。
- 人への刺咬はない。
ツメダニ
- ヒョウヒダニや他のダニ類を捕食する。
- 人を刺すことはあるが吸血はしない。
シラミダニ
- 昆虫類に寄生する
- カイコに寄生することで知られているが偶発的に人を刺すが吸血はしない。
ヒゼンダニ
- 人の皮膚に内部寄生する。
- 疥癬症を引き起こす。
ダニの防除
- 吸血性ダニ類(イエダニなど)は殺虫剤の感受性が高く、一般に使用されている有機りん剤やピレスロイド剤のほとんどが有効であり、残留処理や、室内全体で被害を 発生している場合は、煙霧、ULV、燻煙剤処理でも対応できる。
- 動物寄生性ダニのイエダニはネズミの巣の除去を行う。屋内にあってはゴキブリに準した煙霧処理を行う。
- 鳥に寄生するダニ(トリサシダニ等)は鳥の巣を除去するが、鳥の卵ごと除去する場合は、市町村長または都道府県知事の許可が必要である。
屋内塵性ダニ(ヒョウヒダニ等)の防除
- 薬剤感受性は一般的に低く十分な効果が期待できる殺虫剤は少ない。
- これらのダニの発生は多分に温湿度依存的で、25℃以上、60%以上の湿度でよく発生する。室内を通風し、除湿によって乾燥し、高温にならないようにする。
- ツメダニ類は殺虫剤に対する感受性が極めて低い。現時点では効果的に使える殺虫剤はなく、薬剤に対する対策はあまり期待できない。畳によく発生するのでこれらは加熱処理により対応する。
- ツメダニ類はほかのダニ類を捕食しているので、餌となるほかのダニなどの繁殖をしないように、除塵を徹底し、高温・多湿に気を付ける必要がある。
- 畳に薬剤を処理する場合は室内塵性ダニ用の殺虫剤を用いる。乳剤などは不適当である。