ほこりと汚れ
汚れの発生原因
汚れの発生原因は大きく分けて自然的な汚れ(自然的原因)と人為的な汚れ(人為的原因)に分けられる。
人間の使用による汚れの方が自然的な原因の汚れよりも、量や付着の強さ等ははるかに多い。
ほこり
- ほこりは、建築物から持ち込まれる土壌の粉末を主体とする粉状のものと、建築物内で生じた各種の摩耗粉であり、その大部分は 衣類等から発生した綿ぼこりと呼ばれている繊維粉である。
- ほこりのうち、粒径の小さい粉じんは、浮遊粉じんとなり、空気中に浮遊してなかなか沈降しない。これらは空調設備の空気清浄装置の除去対象である。 それよりもおおきなものが清掃の対象になる。いったん沈降して床や備品の上に堆積する堆積じんとなるが、人の活動や気流に より舞い上がって再浮遊と沈降を繰り返す。これらのほこりは、飛散させずに除去することが必要であり、浮遊粉じんを作らないようなビルクリ―ニングが必要である。
- ほこりは長時間放置してしまうと、経年劣化により、その他別の付着物と混合して、ほこりが別の異物に変化し除去が難しくなる。
ほこりの除去方法
はたき掛け
ほこりは紛状のため、空気中に浮遊しやすい。そのため、はたく、吹き飛ばす作業により、ほこりを除去する。
近代化した建築物の室内は、閉鎖空間であるため、適当な方法とはいえない。静電気を利用して、ほこりを吸着させる器具等を活用する必要がある。
おかくずを用いる方法
おかくずに水分を含ませ、床等にまいてほこりを付着させながら掃き取る。おかくずの粉は保水力が高く、表面積が大きいので、ほこりを 付着させる効果は大きい
から拭き
備品等に付着した微量のほこりを除去するには、乾いた柔らかい綿布等で拭き取るとほこりが綿布に付着する為容易に除去できる。
ダストコントロ―ル法
綿布やモップにほこりが付着する力を高めるため、粘度の低い不乾性の鉱油等を、布の重量に対して20%前後の少量を含ませ拭き取る方法である。 器具の頭部は、常に一定方法に押し進めながら作業を行う。
- 長所
- ほこりの飛散が少ない。油を含ませた状態で長く貯蔵・使用できる。初心者でも容易に作業できる。作業効率が良い。
- 短所
- ほこり以外のものは除去できない。水汚れに対し効果が少ない。油汚れに対して効果がない。
ダストクロス法
化学繊維を不綿布として織り、静電気を利用してほこりを付着させたり、繊維の隙間を利用して土砂等を回収する。ダストコントロ―ル法と比べ 油分による床面の被害がすくないことから多用されている。
バキュ―ムクリ―ニング法
真空掃除機を用いてほこりを除じんする方法。
各種粉じんの大きさ
浮遊性大気じん | 0.1~20μm |
沈降性大気じん | 1μm~0.1mm |
たばこ煙 | 0.1μm~1μm |
細菌 | 0.5μm~50μm |
真菌 | 10μm~15μm |
花粉 | 10μm~0.1mm |
人体・衣服からの発じん | 0.5μm~1μm |
清掃による発じん | 10μm以下 |
一般砂 | 80μm~ |
ほこりの予防
ほこりの侵入を防ぐ
- 建築物内のほこりは外部(外)から侵入したものが多い。密閉性の高い現在の建築物では、窓や隙間から侵入するほこりは少ない。侵入路としては重要視されるのは入口などの開口部(玄関など)である。
- 入り口にエア―シャワ―を設置
- 入り口に前室を設ける
- 扉を自動開閉式・回転式等にする
- 開放式の出入り口にはエア―カ―テンを設置する
- 入り口で衣服・靴等のほこりや泥を除去する。
- 入り口にマットを敷く
ほこりの発生を防ぐ
- 建築物内でほこりが発生する原因は、作業や生活行動の際に、資材や廃棄物の微細片が散乱したり、衣服が摩耗してきた綿ぼこりが散乱することである。また、建材や家具 が摩耗して粉化するなどでして発生する。
- 衣服類や内装材、家具はなるべく摩耗しにくいものを使用する。
- 微細なごみやたばこの灰等を、できるだけ散乱させないように、適当な容器を用意する。
汚れ
- 汚れは、人体からの分泌物や排泄物、手や指の付着物、飲食物、事務資機材、人間の生活・生産活動に伴って発生したものが多い。
- ネズミや、ゴキブリ、クモなど屋内生息動物の活動によるもの。
- カビ類の発生によるもの。
- 天井や高所の汚れのように、主として空気中の浮遊物によるもの。
汚れの除去方法
- 水溶性または親水性物質の除去には、水拭き、水洗いを行う。一般に建材は、水の付着により不具合が生じる恐れが多いものが多く、水分は速やかに除去しなければならない。
- 油溶性物質は水に混じりにくい、そのため界面活性剤を主剤とする洗剤を用いれば、油溶剤の汚れも水溶性の汚れと同様に、水を媒体として除去することができる。
- しみの除去は、時間経過とともに材質に浸透し、酸化・変質して除去が難しくなることが多いのでできるだけ迅速に除去することが重要である。
汚れの性質
- 建材が親水性か疎水性かによって、付着する汚れの状況が異なる。親水性の建材には水溶性物質が付着しやすく、逆に疎水性の建材には油溶性の物質が付着しやすい。
- 汚れは平滑緻密な表面には付着しにくい。付着しても除去しやすいが、孔隙や凸凹が多くて粗い表面には付着しやすく、付着すると除去しにくい。
- 汚れの除去には水を使用することが多いので、水に耐える材質のものは清掃しやすいことが多い。
- 汚れが内部にしみ込みやすい吸水性の建材や、汚れの付着によってさびやかび等の変質を生じやすいものは後の処理が面倒である。
清掃用具
場所・用途 | 清掃用具 |
---|---|
カ―ペットの除じん | 真空掃除機、カ―ペットスイ―パ― |
ビニルタイル床の洗浄 | 自動床洗浄機 |
トイレ | プランジャ―、ゴム手袋 |
外壁の洗浄 | 高圧洗浄機 |
玄関ホ―ルの水拭き | T字モップ |
窓ガラス、ガラス扉 | スクイジ― |
掃除用機械
真空掃除機
- カ―ペットパイルの奥深く入り込んだほこりの除去に適する。
- ポット型が普及している。ほかにシリンダ型もある。
- AC電源(100V)コ―ド式式が主流一応バッテリ型もある。
- 電動ファンによって、機械内部に空気の低圧域を作りほこりを吸引する。
- 集じん部の気圧は外部の気圧より低い。
- 吸水式真空掃除機では、吸引した汚水は機内の汚水タンクにたまり、排気はモ―タ部に回らないように設計されている。
アップライト型掃除機
- カ―ペットパイルの除じんに風量が大きくフィルタパックが大きいアップライト型掃除機が適している。
- 床を回転ブラシで掃きながら、ごみやほこりを機内に吸い込む構造。
- 排気はフィルタパックの全面から行われる。
床磨き機(ポリシャ―)
- 熟練が要求される。
- 左右前後に移動しながら床の洗浄をする。
- 電源は交流式が一般的である。
- 回転数は一般的に毎分150~300回転でる。高速なものでは1000~3000回転のものもある(ドライメンテナンス用)
- サイズは、凸凹のある床面で使用するブラシまたは平らな床面で使用するパッドの直径で区別している。
- 使用するブラシは直径20~50cmで、ナイロン繊維を植えたものが用いられる。
- 一般に使用されているのは1ブラシ式である。2ブラシ式、3ブラシ式もある。
- 平らな床面に用いるパッドは化織製フェルト状の不織布に研磨粒子を付着させたもので、用途によって各種硬度のものがあり、色分けによって区別されている。
- 洗剤供給式の床磨き機はタンク式スクラバ―マシンと呼ばれる。
自動床洗浄機
- ビニルタイル床や石床に適する。
- 洗剤供給式洗浄機と吸水式真空掃除機の機能を併せ持つ。
- 前進しながら洗浄し同時に汚水をスクイジ―装置でかき集め真空吸引装置で汚水タンクに吸い上げる。
- カ―ペット床の洗浄用のものもある。
カ―ペットの洗浄用機械
カ―ペットの洗浄用機械には、洗剤供給式の床磨き機、ロ―ラ―ブラシ方式機械、噴射吸引式機械(エクストラクタ)、スチ―ム洗浄機などがある。
洗剤供給式の床磨き機
- タンク式スクラバ―マシンに比べ、カ―ペットの繊維による抵抗が増すため、カ―ペット専用のもの(低速回転)を使用する。この機械は、カ―ペットを敷いたままシャンプ―クリ―ニングする方法として 早くから開発されたもので一般的である。
- 洗浄効果は大きいが、パイルを損傷する恐れがあるので、ウ―ルのウイルトンカ―ペットよりは、むしろ化学繊維のタフテッドカ―ペット等の洗浄に適している。
- ブラシが回転することにより、洗浄がカ―ペットのパイルにこすりつけられて発泡し、その泡によってクリ―ニングが行われる。
- 泡は別の真空掃除機により吸引除去する。
ロ―ラブラシ方式機械
- 洗剤供給式の床磨き機を改良したもの
- 洗剤が機械内部で完全に泡となって供給され、ロ―ラ型の縦回転ブラシがパイルにあたり、これによってクリ―ニングが行われる構造となっている。
- この機械は、カ―ペットの基布を濡らして収縮を起こす恐れが少なく、パイルに対するあたりも柔らかで、パイルを傷めることが少ない。
- 洗浄力はスクラバ方式の機械よりも劣る。ウィルトンカ―ペット等のウ―ルカ―ペットに適した機械である。
噴射吸引式機械(エクストラクタ)
- 操作杖の先端にあるノズルから洗浄液を噴射して、直ちに吸引口から吸引する構造になっており、これをカ―ペット上で操作することによって洗浄が行われる構造となっている。
- 洗浄液を噴射後直ちに吸引する仕組みであるが、多量の液を噴射するので水分に耐えるカ―ペットに適する。
- この機械は、シャンプ―クリ―ニングのパイルに残留した洗剤分を、清水又は温水ですすぎ洗いをする場合に使用することが多い。
スチ―ム洗浄機
スチ―ム洗浄機は、高温の水蒸気で汚れを分解するため、エクストラクタより残留水分が少ない。